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watanabe★kinoka.net
| 県名 | 高校名 | 演目 | 作 | 演出 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 山梨 | 甲府西 | 盤上の沖縄戦 | 土屋百合香(創作) 高須 敏江(顧問) |
甲府西高校演劇部 | 創作脚本賞 |
| 神奈川 | 麻布大学付属渕野辺 | 幕末ジャイアンツ | 四海大 | 江花 明里 | 優秀賞 |
| 東京 | 都立淵江 | シンデレラたちのマーチ | 塩屋 愛実(創作) | 塩屋 愛実 | |
| 山梨 | 甲府昭和 | 靴下スケート | 中村 勉(顧問創作) | 山下 僚子 大場 祥子 |
優秀賞(全国フェスティバル) |
| 神奈川 | 桐蔭学園 | それください | 高橋 淳(創作) | 高橋 淳 | |
| 静岡 | 富士 | 紙屋悦子の青春 | 松田 正隆 | 西尾 去j | 最優秀賞(全国) |
囲碁部員のカズミのもとへやってきたマキ。マキは演劇部のために台本を書いていた。囲碁の勝負と、マキの台本の沖縄戦。その二つが交叉して……。
囲碁の「捨て石」をキーワード(着想)として、沖縄戦を劇中朗読劇として描いた作品。囲碁という着想はよかったと思うのですが。
途中「あたり」「ウッテガアシ」「シチョウ」などの囲碁用語が出てきて、それを結びつけて戦争を描いていく過程において、どうにも疑問を感じてしまいました。私自身は囲碁をたしなむのですが、それもあり囲碁としての意味と描きたいものにギャップを感じてしまいます。囲碁的な意味でも、戦争という意味でももっと精査する過程が必要だったのではないでしょうか。
要するに、観客に対して、それらの用語から結びつけられる戦争における現実が効果的に伝わったかということなのです。また、どうみても囲碁を実際に打っているようには見えない。今年の北部関東大会で上演されたナユタという作品では、将棋を道具として使い、将棋の記譜をきちんと覚えた上で本当に打っていました。そういう小さなリアルの積み重ねが演劇には必要です。
物語終盤における戦時中の中絶についてのテーマ。カズミが大反対するのですが(それは物語構成上必要なのですが)、その背景が全く描かれません。なぜそこまで固執したのか、その背景をきちんと描いてほしいです。それに加えこれで戦中のお産のお話で終わってしまい、捨て石というキーワードはどこに行ってしまったのかという印象を受けました。テーマは1つに絞って、途中でブレないことを気を付けましょう。
全体的に、ゆるみのない演技であり、力を張りすぎてお客を置いてきぼりにしたといえると思います。メリハリ、ゆるみについては全体感想にゆずります。着想が評価された(?)創作脚本賞ではあるものの、その全体的な完成度については疑問符を打たざるを得ないでしょう。しかしながら、全体を通して真面目な作りには好感を持ちましたし、(おそらく修学旅行か何かで感じた)沖縄戦争についての衝撃を伝えようとする必死な想いは充分伝わりました。それだけでも大きな意味があったと思います。
幕末の坂本竜馬。米国人とベースボールで戦うために、大久保利通、新撰組3名、西郷隆盛などとベースボールチームを結成し、一生懸命勝負するのだけど。
誰しも知ってる幕末の有名人がずらりと勢揃いして、ベースボースをするドタバタコメディ。前々からよく見かける作品で気になっていましたが、初めて観ました。主役9人中8人男子が演じる非常に勢いのある劇で、大変面白かったと思います。
パンフレットによると「みどころは迫力と殺陣」だそうですが、その殺陣がなぁ……。動きにキレがないんですよ。動作の美とでもいいましょうか。キレというのは静と動、「動作前の停止」と「動作中の動き」と「動作後の停止」、この3つがあって初めて成り立つものなのです。この3つを明確に演じなきゃいけないのですが、出来ていません。そして刀は金属(鉄)ですからもっと重いんですよ、絶対軽そうに持ってはいけません。こう言っては悪いかも知れませんが、大勢の「勢い」で誤魔化しているという印象でした。
これは劇全体にも言えることで、9人がよく合わせてリアクションを取るというコメディの基本ができており笑いも起こっているのですが、勢いに重点を置きすぎるあまり「間」が手抜かりになっています。必要な「間」まで早い(必要な止めもない)。同じことで、大勢しゃべることで必要な台詞が聞き取れないこともあり、ここも誤魔化した印象を受けました。
ただそれだけ勢いに重点をおいただけあり、テンポの良い笑いと、個々人のキャラクター付けなどを使って(もう少し人物像をつくった方がいい役もありましたが)、面白く仕立てていました。野球シーンで横を向き合って処理しそうなところを、打ち手も投げ手も正面を向けて処理したのはよかったと思います。
ラストは、再び敵同士みたいな終わり方でしたが、もうちょっと哀愁が出てもよかったかなとも思います。尺の問題もあるのでしょうが(元台本は2時間らしいので)、最初の敵同士と最後の敵同士の対比を意識して描くとか少し配慮がほしかったなと感じました。
少年院に送られた親殺しなどの少女たちの心の交流を描いた物語。
まず幕前での親とのやりとり(の一人芝居)から始まり、幕が開いて少年院となります。机5つを半円形に並べたシンプルな舞台。全体に、心理劇なんですが、5人の登場人物のそれぞれの独白(モノローグ)挟んでいくので、最終的に誰の何を描きたかったのかはっきりしないという終わり方になってしまいました。
独白による描写なので、背景というものも描ききれておらず、なんとなく中途半端。難しいところではありますが、きちんとした背景付けをした上で、それを含めどうにしたかったのかが見えたらよかったかな……とは思います。パンフなどをみると「感動させる芝居を作りたい」とのことですが、そこにはやっぱりステレオタイプではない少年犯罪に対する思慮が必要だったのではないでしょうか。そして描写をあまり分散させないように。
この高校もですが、ゆるみが出来ていません。全キャラが「張り」「張り」となってしまったために若干台詞が聞き取りにくく、張りつめたムードがずっと続くので観る側としては疲れ(飽き)やすく、そこも考慮がほしいなと思いました。
全体的に丁寧な舞台作りだったと思います。後半の抽象的なイメージを体で表現するなどの演出(方針)はとても良かったと思います。おそらく「このまま(社会状況)では、こういう事件をどこでも誰でも起こす可能性がある」といったような背筋が寒くなるような終わり方でそれも面白かったです。ただどうせならばもっと徹底的に背筋を寒くしてくれたならなという感じもします。そのためには「狂気」に対する視点として「普通」な人物を配置する必要があったのかもしれません。
ゴミ袋の山の部屋にやってきた家庭教師。ゴミの山と不真面目な生徒と家庭教師、その中で……。
ものすごい肩の力の抜ける、なんとも捕らえどころのないシュールな劇です。なんとも言えない妙な雰囲気で起こるバカバカしさ、ゴミの山のゴミで意味不明に遊ぶというそういう作りで、顧問の先生が出演者二人(演劇部員が二人なんだそうです)のために充て書きした台本とのこと。
間の使い方はとても良いんですが、メリハリがなぁーと感じました(メリハリのなさを狙ったものかも知れませんが……にしてもなぁ)。全体にもう少し声を出していい気はするし、ゆるむところはもっとゆるんでいいと思います。テンポがずーっと変わらないから飽きてくるんですよね。ノリの部分はもう少し乗って(一時的にテンション上げて)いいと思うし、抜け(ゆるみ、ボケ、オチ)の部分はもっと抜けた演技をしたらよかったんじゃないでしょうか。その方が、もっとバカバカしさが出たと思うんですが、あまり演技で笑いを取れているという印象はありませんでした(爆笑には至らないという感じで)。BGM選曲ではかなり受けてましたけど。
二人しかいない演劇部という追いつめられた状況で、シュールでバカバカしいという不思議な舞台作りに懸命に取り組んだ姿には好感を受けました。
自殺志願者掲示板、そこで集まった5人の人物。でも主催者は遅刻して来るのだが……なんだか主催者の様子がおかしい。
作・演出ということですが、自殺志願者が集まるというありがちなエピソードを使いながら、実は集団自殺ではなく新興宗教に狂った主催者に殺されるだけとし、そこで自殺志願者が死ぬことを拒否するという構成は非常に秀逸です。自殺という話を使いながら、これだけ嘘くさくない話作りは初めて見たような気がします。
さて幕開き、舞台手前に白っぽい薄幕があり、その奥に一人の人物……というのがよく分かりませんでした。その薄幕もどいて、部屋に見立てた黒パネルで囲まれた部屋(ビルの部屋かな)と簡素な椅子。そこにやってくる自殺志願者たち。その自殺志願者の人物立てがよく、偏屈なおじさんである鬼火、絶望さん(オタク)、女装者(性同一性障害設定かな?)麻衣とその彼氏亮とか、一見肉体派な智宏とか。
各人のエピソードが若干浅いなぁーと思ったら、鬼火さんが最後にラストをもっていって、よかったと思います。もっと鬼火の苦悩を掘り下げて描いたらなとは思いますが、それでも適度に笑いに振りつつシリアスな劇としてまともに見られたのはめずらしかったです。面白かった。
紙屋悦子(かみやえつこ)の青春時代である戦中の、若い将校への恋心とその将校の友人とのお見合いを中心といて描いた物語。
すばらしいの一言に尽きます。高校演劇各校は、何としてもこの上演映像を手に入れて多くのことを分析・学んで欲しいと本気で思います。本当に良い見本となる演劇です。
良い良い言っていても始まらないので、具体的に。舞台は、年老いた悦子夫婦のモノローグに始まり、悦子が兄夫婦と住む実家で展開します。チラッと審査員が手にしている台本がみえたので覗き見したのですが、元台本の半分以上を削り間を十分に使って演じています。とても良い判断です。
最初間がとても良いなー、動作がとても良いなーと思ったんですが、何より「佇まい」がすごいのです。そこに座ってるだけで、立っているだけで、歩いてるだけで、ただそれだけで存在感とムードと日本の哀愁が出ています。パンフレットから長いですが次の言葉を引用します。
この作品の稽古が進み、通し稽古になり音楽も入るころになると、今まで経験したことのないことが起こりました。役者が涙を流すことはこれまでにもありましたが、稽古を見守るスタッフが涙を流しながら音楽を流し、笑いをこらえながら照明のきっかけを出しているのです。
最初から、この作品は今まで上演してきた作品とは違うなという印象は持っていましたが、稽古をすればするほどその感じは強まっていきました。気がつくと、作品世界とも役の人物とも抜き差しならないかたちで向かい合っていることに気付くのです。しかも実に自然に。
この状態になれたからこその演技であり、実にリアルに舞台上にその人物が居るのです。役者に本当に役が入っているのです。これこそ演劇の神髄で、この劇を観ることできただけでも本当に幸せでした。文句なしの最優秀賞です。