まとめ感想 - 2013年度 群馬県大会

今年は事前にパンフレットすら読まずに上演を見ていたのですが、観ていて「これ演出されてないな」と思った舞台は必ず演出不在でした(○○部演出含む)。県大会のレベルの高さは例年書いていることですが、演出をきちんとしない限り県大会は突破できないと思います。

……といいつつ、優秀賞の高崎商科大学付属「雰囲気のある死体」は演出不在だったのですが。観ていて明らかな演出配慮不足を感じたので入賞するとは思っていましせんでした。台本選びの面白さが評価されて、完成度は高くとも有名台本だったので新田暁あたりは上位大会に行けなかったのかなという感想を持ちました(もちろんそれだけではないけども)。有名台本で県大会突破はハードル高いのかもしれませんね。

2013年11月12日 記

大泉高校「どっちの選択?」

作:江原慎太郎・大泉高校演劇部(顧問・生徒創作)

あらすじ・概要

委員会決めで残ったクラスメイト4人と委員長。早く決めて帰りたいんだけど……

感想

正直なところ台本が微妙かなと感じました。演出の問題もあるかと思いますが「選択」というテーマを際立たせるシナリオ構成にはなってなくて、なんとなく流れて行ってなんとなく終わったという印象です。

間とか動作とか気にして作られていたのですが、緩急が少ない印象を受けました。台詞のテンション(発声のテンション)がほぼ一定だったように感じられます。劇全体のテンションもほぼ一定で上演開始20分ぐらいで飽きてきてしまいました。

教室のセットはちゃんと作ってきてた印象がありますが、教室の構造は少し謎が残りました。見間違えでなければ、上手と下手の両方から出入りしてませんでしたか?

細かいことですが、入学間もないはずなのに服装がけっこう自由だったり、入学間もないはずなのに赤点うんぬんといった電話がかかってきたり、リアリティが足りない印象でした。最後、幕が降り切る前にBGMが止まっていたのも気になりました。

「選択」というテーマをちゃんと演出的に配慮して上演されていたら、また違った印象を受けたかもしれません。

富岡東高校「全校ワックス」

作:中村 勉(既成)
潤色:富岡東高校演劇部
演出:橳島 唯

あらすじ・概要

学校全体を生徒で分担してワックスがけする全校ワックス。そこでたまたま同じグループになった5人が廊下のワックスがけをしながら織りなす物語。

感想

これまた有名な台本で、去年の新田暁の上演が強烈に印象に残っているのですが、それと比べると劣る印象は拭えませんでした。

去年の感想と多少共通するのですが「掃除が適当すぎ」「廊下の構造が適当すぎ」の2つに尽きると思います。バケツに水を汲んでくるシーンがあるのですが、汲んできた水は一度も使うことなく片付けられます。なんのために汲んできたの? 適当に掃除をすることはそれは高校生だからあるでしょうが、それにしたって「ここまで掃除した」ってものがわからないし、人物によってまじめに掃除する人も適当に掃除する人もいるでしょう。序盤で大家が廊下の窓を開けるジェスチャーがあるのですが、その後で窓より外側を掃除しているのはどうなんでしょう。

この台本は綺麗にワックスがけしたところを汚すことに最大の見せ場があるのです。そのシーンを際立たせるには「綺麗にワックスがけ」する必要があるし、嫌々でもなんでも広い廊下を一生懸命ワックスがけするからこそ「あぁー」というラストシーンにつながるのです。

それと同時並行で人物間の心の距離がだんだんと縮んでいく必要もあります。頑張って上演してはいましたが、台本を活かしきれなかったと言わざる得ないでしょう。

桐生高校「通勤電車のドア越しに」

作:金居 達(既成)
潤色:桐生高校演劇部
演出:後藤 潤一
※最優秀賞(関東大会へ)

あらすじ・概要

通勤電車のドアに顔だけ挟まれた男とその周りの人物が織りなすドタバタコメディ。

感想

すごく面白かった!

2005年の桐生南の上演で観ているのですが、その時より面白かった。人物がきちんと立っていて、リアクションがちゃんと取れている。それに加えてちゃんと演出されている。

気になったところとしてはドアをどかした後のポールが視覚的に分かりにくいことです。白や色つきの棒でも、昔の桐生南のように枠だけでも何でもいいのですが、もう少し分かりやすくしてもいいんじゃないかな。また、列車アナウンスを声でかき消すシーンは実際にかき消してほしかった。ミキサーでボリューム絞って中域少し下げれば聞き取りにくくなりますから(もしくは聞き取りにくい音加工をしておけば)十分可能だと思います。

それと暗転のテンポが少し悪かった。装置の転換はないのですから、もう少し早く処理できないものでしょうか。以前の桐生南はもっと手早く処理してた記憶があります(暗転しないで回想処理してたんだっけかな)。

カメラの少年が出てきますが、写真を撮る際フラッシュを炊いたほうがいいと思います。あと電車の椅子ですが少し大きいように見えました。椅子と分かりにくいので、欲を言えば左右に2つほしいし、もう少し固そうな座席に見せられないものでしょうか。

色々書いてしまいましたが、とても面白く、台本のアレンジもうまくされていて楽しめました。関東大会も頑張ってください。

伊勢崎清明高校「あさぎゆめみし」

作:小野里康則(顧問創作)
演出:岩田 里都

あらすじ・概要

中学の遠足登山の最中で谷に落ちてしまった啓太と姫川、そして熊谷。さてどうしよう。

感想

くまむしくらぶの啓太と姫川が成長して中学生になりましたというお話。「くまむしくらぶ」を知ってると「啓太と姫川、変わらないな」と少しニヤニヤできます。虫好きはまだ変わらないのか(苦笑)

人物がステレオタイプなのは相変わらずなのですが、台詞の間が悪いかなという印象です。リアクションがとれてない感じです。全体的にギャグの流れなのにあまり笑いが取れてないのはその辺が原因だと思います。

舞台装置の高いところと、全体を広げて落ちた後の場所を切り替えてるあたりはうまく処理してたなと思います。

説明的な台詞がやや目立ち、BGMもやや説明的で、体を打って動けないはずの人物が気づいたら普通に歩いていたり、色々と細かいところが気になりました。

頑張って演じられていたとは思います。