前橋西高校「制服の落下点」

  • 作:木村 繚真(既成)

あらすじ・概要

「こんな世の中、狂ってる」。その日マユミはそんな言葉を言いながら命を絶ちました。時が経ち、その場所へと集まった友人たちの物語。

感想

台本ははりこの虎や作者のサイト等にあります。

幕あがり、長椅子ベンチやちょっとした生け垣が置かれた舞台でした。高さ2mぐらいの小さい街頭は違和感しかないので、無いほうが良いかな。公園かなと思ったのですが、遊歩道らしいです。ランニングするような遊歩道にベンチはどうなんだろう……?

舞台中央の手前側に置かれた青いビニールシートが一段際立ち、その上に花などが置かれていてそこがその場所なんだろうなとわかります。でも、こんなに大きいビニールシートを常設しておける遊歩道ってあるの? 実際にそのような場所があり得るのかどうかもう少し検討してほしかった。もし床を濡らさないための措置なのなら、ビニールシート以外の違和感のない何かを考えてほしかった。

間やテンポにとても気を使っているのがわかりました。アクションとリアクションにも気を配っていたと思います。これだけでも引き立ちます。コーラとかサイダーに本物を使っていたのもとても良いです*1。開けたときの「プシュー」って音は(本物なので)当然リアリティがあります。

台本の問題なのですが、マユミの弟「龍」がまだ来ないという15分目ぐらいのシーンで、一度話が切れます。その後、龍が飛び降りるシーンまで雑談が続くのですが、この雑談に魅力がありません。この部分から飛び降りまで、話を牽引したり興味を惹くものがないのです。ただ単にリアルな雑談を見せられても困ってしまいます。かなり致命的な問題です。

後半、龍がマユミと同じマンションの10階から飛び降りてしまうわけですが、講評でも指摘されていたとおり正面の客席側を向いて演技してほしかった。表情をお客さんに見せるというのはもちろんですが、お供えが置かれてる場所と飛び降りて落下する場所が違うと、どうなってるの?という疑問が生まれます。タイトルにもある大切な落下点がぼけてしまうのはもったいない。靴は別に落ちてこなくても良いし……。

見ていてずっと疑問だったのですが「落下点」や「マンションの10階」は「どこ」にあったのでしょうか。お供えするとしたら普通落下点にしますよね……。落下点(地上)に人が居て、飛び降りたら危ないし、最悪当たって一緒に亡くなることもあり得ます。上演中これらの疑問で頭の中はいっぱいです。きちんと場所を決めて(設定して)演じていましたか? なんとなく下手とかではなく、寸分違わず位置を決めて役者の中で意思統一していましたか? 建物や壁といった装置なんかなくても、役者たちの中で場所がきちんと決まって、本当にそこにそれ(マンション等)があるのと同じように演じられれば、それは十分観客に伝わります。この上演ではマンションの位置も大きさも、遊歩道の幅も位置も構造もよく分かりません。

全体的に(台本の問題でもありますが)、マユミやみんなが一体全体何に対して「本当が欲しい」「世の中狂ってる」とまで追い詰められたのか、その描写が甘いので劇全体の印象がぼやっとしたものになっています。それが伝えきれてないのがもったいないと思いました。

台本の問題に足を引っ張られつつも、演技はとても丁寧に演じられていて引き込むだけの十分な魅力がありました。素晴らしかったと思います。

*1 : その前の上演が、食事シーンが大切なのに食事を一切用意せずフラストレーションが溜まっていたので余計に。

前橋西高校「改造人間」

脚本:喜多 淳
演出:大久保 岳

主観的感想

TVのヒーロー物に、演劇的ギャグを取り入れた作品。 笑いを狙っているのは分かるのだけど、不発が多かった様子。 笑える、笑えないの境界は難しいところにあるんだと観ていて感じました。 登場人物達が次々と気持ち独白するあたり、 観客を少し置いて行っている印象を持ちました。 (演技の)動きも適当で、間がうまく計れないのか、 タイミングを伺っている姿を何度も見かけました。 音のつけ方も、何か鳴らしてごまかす、という意図を感じてしまい、 もっと工夫をしてほしいなと感じた作品でした。

審査員の講評(の主観的抜粋)

  • 全体にメリハリがないために、流れがベタベタになる。 もっと、話の流れや、動き、シーンにメリハリをつければ違ってくる。
  • ステージの広さ負け。地区大会よりも広い舞台に、 地区大会で使った大道具を持ってきたのは失敗。 そのため、こじんまりとしたドタバタ感が出なかった。 舞台を狭める選択があっても良かったのではないか?
  • ピン(スポットライト)の外は、隠れているという、 芝居を観る上での約束があるが、 この劇ではピンの外の役者が動いてやりとりをしていた。