高崎女子高校「真っ赤な真実」

作:長岡音羽、海老沼柚衣(生徒創作)
※創作脚本賞

あらすじ・概要

林間学校ならぬ高原学校での休憩室のひとコマ。先生たちのことを噂する生徒たち。うわさ話はやがて暴走し、馬場先生が悪者になってしまう。

感想

照明で中央を丸く照らして上手に椅子2脚と机、中央に四角いテーブル、下手に座布団。奥に荷物。上手奥に姿見かな。部屋としての空間らしいのですが、荷物と姿見が照明の外。照明の外は存在しない空間というルールが一般的なので、劇空間がいい加減な印象を受けてしまいました。

講評でも褒められていましたが、ガヤ(わいわいガヤガヤ)がとてもうまかった。メインの台詞が聞き取りにくくなることもなく、かといって不自然でもなく。これって結構難しいのですが、うまかったと思います。一方で台詞のかけあいやシーンのテンションが常に高くメリハリが足りない印象。コメディのリアクション(演出)が多く(例えば「えーーーっ」という台詞とか)、それでいてコメディというよりはシリアス劇なので全体から作り物っぽさを感じてしまいました。

登場人物の服装。「小学生? 中学生?」とずっと疑問でしたが高校生のようです。見た目で個々人の差をつけることは重要だし、高原学校という設定なので服装の制限はあるのかもしれませんが、地味すぎてぱっとしない印象が拭えません。いっそ(学校指定の)ジャージとか制服でも良かったのではないかと思ってしまいました。リアリティを追求した結果の「リアル」な服装なのかもしれませんが、演出的配慮(見栄え)を考慮したリアルっぽい服装ってのもちょっと考えて欲しかったかな。

全体的な部分。メリハリのなさに加えて話の進行が遅く「これ何についての話なの?(どこに注目して興味を持続させればいいの?)」という印象が拭えません。いわゆの「引き」の不足です。ラストシーンの「みんな操られてる!」「噂にすぎないのに!」といった台詞からネットなどでよく見られる根拠ない噂に扇動される人々への皮肉だと解釈したのですが違うかな。そうだとするとラストシーンで携帯を置き忘れたことも辻褄が合うのですが、それなら置き忘れるのはスマホのほうがよかったと思います。むしろ、スマホを劇中で小道具として使用し、うわさ話のネタはその場に居ない友人からスマホ経由のメッセージで送られてくるほうがよかったのではないでしょうか。

もうひとつ。馬場先生とみゆき先生の話が全体のほとんどを占めるのですが、馬場先生は登場せず、みゆき先生も余り出てきません。話の当事者が登場しないので、分かりにくいし実感も持ちにくい。噂と実際の人物像(実際の出来事ではなく)の対比を見せればでより効果的にテーマを演出することができた気がします。

色々書いてしまいましたが、演技の基礎はしっかりできてるし声もちゃんと聞こえる。生徒の創作脚本ということも好感が持てます(実際それが評価されて創作脚本賞だったようです)。今後は個々のシーンの見せ方だけではなく、一歩引いた立場で全体のバランスを演出してみましょう。昔は県大会常連だった高女の久しぶりの県大会でした。今後も頑張ってください。