新島学園高校「ブナの花道 -人民の中へ-」

  • 作:大嶋 昭彦(顧問創作)
  • 演出:三ヶ尻 怜司
  • 最優秀賞(関東大会へ)

あらすじ・概要

夏祭りの余興に高校生たちが農村歌舞伎をやるために集まり、時を同じくして大学生のゲンゾウが農業体験にやってきた。江戸時代ぶりという農村歌舞伎の復活はうまくいくのか、ゲンゾウは本当は何しに村にきたのか……。

感想

中割幕を寄せてその奥に少し高くなった台と3段の階段。背面はホリ。手前に上下(かみしも)に大きめの木(を描いたパネル)。下手に、落語などの演目中にめくる題目などが書かれた木製の板(「めくり」と言うらしい)。比較的簡素な装置ですが、この舞台には必要十分でした。

めくりに書かれてたのは劇中劇の農村歌舞伎の題目と、それ以外は「一日め」「二日め」「最終日」とかでこれ本当に必要だった? 「一日め」の日が崩し字だったので、「一、○め」ってなんだろう? ってずっと気になってました。歌舞伎中もめくりが遠くて別に見てないですし……。


みんな自然に緩んだ演技ができていて、人物にとてもリアリティがあります。ムネさん演技うまいなーと思いました。まさに田舎で農業やってる人って感じなんですよ。他校が大人を大人に見せることに苦戦する中、「大人」「おばあちゃん」「村長」などなど見事に演じていました。発声、動き、立ち振舞がなんといってもすごい。終盤に登場人物が全員ずらっと並ぶシーンがあるのですが、その一場面を見ただけで全員の年齢とそれぞれの関係がはっきり分かるんです。喋ってないのに立ち姿が語ってるんです。みた瞬間にこれはすごいと。別の言い方をすれば、関東行き決定だなと(苦笑)

  • 掛け合いもちゃんとリアクションになってる。
  • 台本の台詞も上手い。違和感のない年齢相応の台詞になっていて、演者がそれに応えている。
  • 捻挫した女子高生カスミが、足が痛いまま劇中劇を演じるところとか演技に唸るばかり。
  • その劇中劇も、持ち運べる歌舞伎っぽい幕を用意することでテンポを犠牲にすることなく、しかも非常に分かりやすく演出。また劇中劇を劇中劇として演じることはかなり高度な演技力を要求するのですが、「演じてる感」がちゃんとあってすばらしい。
  • ラストシーンでの、ゲンゾウのお辞儀が美しい。姿だけでゲンゾウの気持ちがとても良く伝わってくる。

挙げればキリがない感じで、例年の新島上演(県大会)と比べても今回はかなりの完成度でした。


そして例年の新島といえば、台本テーマとそれに関する演出が(演技レベルに対して)おざなりになることですが、今年の台本はテーマらしいテーマがなく、一応話筋はあるけど中身は無いに等しい。それが逆に新島には合っててよかったように思います。講評ではその辺り(テーマ性のなさ)が指摘されていましたが、別にこのままでいいんじゃないのかな。*1

今年の新島はこのレベルで作ってくるのかと感心しました。上演おつかれさまでした。面白かった。

*1 : 台本をテーマ性の面から突っ込みだしたらキリがないし、そういう台本でもないでしょう。娯楽演劇だっていいと思うんですよ。