芸術総合高校「Midnight Girlfriend」

  • 原作:モリエール
  • 翻訳・翻案:稲葉智己(顧問創作)
  • 優秀賞

時代はおそらく中世ぐらい。貴族の建物。夜な夜なバルコニーで愛を語らう二人。この二人の恋の行方は……

良かった点

  • 装置がよく、貴族の玄関(+バルコニー)と広間ですべてをきれいに表現していた。
  • 登場人物の衣装や立ち振る舞いがとてもきれいで、舞台に説得力を持たせていた。
  • 玄関と広間を切り替えながら同じ状況を2か所で説明したシーンが工夫されていてとてもよかった。
  • リシェルの声がとてもよかった。

気になった点

  • 台詞がすべて早口だった。
  • 演出が居ないはずがないのに、演出表記がない。実質顧問の演出だから書けなかったのかな……。

いろいろ

ストーリーも演出もよく、とにかく引き込まれあっという間に60分経っていました。改めて何が良かったのかと考えると、演技(台詞よりも立ち振る舞い)と演出の要因が大きいと感じます。

ただやはり、レベルが高いだけに[とりかく早口がもったいない]です。内容を60分に詰め込むため仕方なかったのだとは思いますが、なんとか工夫することはできなかったのと思います。

とはいえ、久しぶりにめちゃくちゃ面白い舞台を見たなという印象で、とてもよかったです。

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宇都宮文星女子高校「ジャングルジムが消えた日」

  • 作:海月(顧問創作)

グループ学習(?)課題として、廃校になった元学校に泊まり込みをした女子5人のおりなす物語。

良かった点

  • LINEのやり取りを、若干カタコトの声で読み上げることでうまく表現していた。
  • 主題の「ジャングルジム」を複数人で表現していて、それが崩れていく(公園から消えるの意図)表現が素敵だった。
  • みんなの声がよく通っていて、聞き取りやすかった。

気になった点

  • 舞台が広すぎるように感じたので、幕や照明を使って狭めて、今の半分ぐらいの広さでやったほうが、登場人物同士の「近さ」が出て内容によりマッチした気がします。今のままだと閑散とした印象がぬぐえません。
  • リアルな内容なのに、装置の教室の壁が、上手側で欠けていて廊下が見えるという抽象的な表現はミスマッチな感じがしてしまった。
  • パネルが6尺のため低く感じた(教室感が弱い)。
  • 火災報知器(消火栓)を止めるときに単に叩いていたけど、叩くだけでは止まらないのでは?(紐を引っ張くと止まるらしい)
  • プロジェクターを使った演出があるけども、表示サイズが1メートルぐらいであるため、よくわからない。装置の背面を使って大きく映してもよかったのでは。
  • 同じくプロジェクターを使う演出と、演技の演出が同時に行われている部分があり、どちらを見せたいのかよくわからなかった。

いろいろ

まっすぐに(結末から逆算した要素が少なく)作られた物語に感じられました。自由な発想で登場人物たちが掛けをするのは魅力だと思いますが、その一方で「この先どうなるんだろう?」「結末はどうなってしまうんだろう?」というワクワク感が少なくなっていました。前半にもう少し観客を引き込む要素があればより良くなったかも。

公園遊具問題(やそれを通したSNSとかの色々)はたしかに存在するし表現もしていたのですか、やや「問題の表層部分をなでた感」がありました。例えば、複数の「声」として表現される世間なる存在は、(現状の物語上は)ややステレオタイプに感じてしまいます。ぼんやりとした「世間」ではなく、具体的な一人を登場させたほうが伝わりやすかったのではないか、2つを無理につなげようとして話が少し散漫としてしまったのではないかという印象を受けました。

全体的には楽しかったです。

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伊那西高校「BORN帰り」

お盆帰りにかけた題材の話。黒子がトトロのまっくろくろすけ的な「存在し普段は見えないもの」として舞台上で扱われます。黒子ありきなのはわかっていますが、それは分かった上で「この黒子が視覚的にうるさい」。舞台上で黒子が出てきたら見えないものとして扱うという約束を何の説明もなく崩し(しかも観客に新基準を示すことなく)演出するので、見せたいものか見せたくないものかがよくわからず、とても中途半端に見えてしまいました。

一生懸命作っているのは分かるのですが、動作が雑に感じられ(静止がきちんとできてないし、ひとつの動作の最後まで動ききれてないため)、BGMも照明効果も演出も過剰に説明的すぎて残念。例えば、対象が死者であることを表現するために、三途の川を表現(布ひらひら)するのは説明的すぎる演出で、このようなものが随所に見られました。

また笑いを狙ってギャグをしているのですが結構不発してた印象があります。ふざけて突拍子もないことをしても観客は笑わないのです。1回目は笑うかもしれませんが、最初だけになってしまいます。観客が予想していることを裏切ると自然と笑いが起きますので、気をつけてみるといいと思います。

高崎商科大学附属高校「修学旅行」

県大会講評で指摘された「でぇーーーっ」という驚きの表現が分かりにくいというのを「で、えーーー」と修正してきていました。たしかに断然分かりやすくはなっているのですが、今度は逆に不自然さが際立っていました。少し止め(間)を取ってから「でぇーーー」と言うとか、そのシーンでは他の人を黙らせるとか、演出上の工夫をしたり、発声の仕方を変えたほうがより望ましかったような気がします。

大人の動きがまだ少し早い印象でした。急いで捌けようというのが見え透けているようでちょっと残念です。コメディとして多少整理され見やすくなり進化してたとは感じましたが、ちゃんと演出置いたほうが良いでしょう。

筑波大坂戸高校「快楽サランラップ ~おいしいお鍋の計りかた~」

久しぶりの筑坂(つくさか)の上演でしたが「ああ、たしかに筑坂ってこんな上演だった」と思い出させる内容の劇でした。同じ埼玉の秩農と並んで関東大会常連校。手前と奥を光のあて方のみで空間を変えて、細かいシーンの区切り(暗転)をテンポよく繋いでいく。技といえば技なんですけども。

今回の上演は、その「暗転時の場つなぎとしての手前シーン」が暗転するのに必要だから入れた以上の意味を感じられませんでした。特に後半はそれが顕著でこのシーン明らかに要らないよね?と感じられるものがいくつもありました。たまたま見た筑坂の上演がそうだったのか、毎年そうなのかはわかりませんが、後者だとしたら自分たちの形式に囚われすぎてそれが逆に足を引っ張っているといえるような気がします。

話の筋は存在しますが、テーマを浮き出させるというよりは、ワイワイガヤガヤこんなのがやりたかったので、気づいたらこんな話筋になっていましたという印象を強く受けました。あとスモーク炊きすぎです。もっとも、やりたいことを全力でやりきったという意味ではとても清々しい上演だったし、特に飽きさせないあたりは基礎演技・演出力の差なのだなと感じました。