大泉高校「どっちの選択?」

作:江原慎太郎・大泉高校演劇部(顧問・生徒創作)

あらすじ・概要

委員会決めで残ったクラスメイト4人と委員長。早く決めて帰りたいんだけど……

感想

正直なところ台本が微妙かなと感じました。演出の問題もあるかと思いますが「選択」というテーマを際立たせるシナリオ構成にはなってなくて、なんとなく流れて行ってなんとなく終わったという印象です。

間とか動作とか気にして作られていたのですが、緩急が少ない印象を受けました。台詞のテンション(発声のテンション)がほぼ一定だったように感じられます。劇全体のテンションもほぼ一定で上演開始20分ぐらいで飽きてきてしまいました。

教室のセットはちゃんと作ってきてた印象がありますが、教室の構造は少し謎が残りました。見間違えでなければ、上手と下手の両方から出入りしてませんでしたか?

細かいことですが、入学間もないはずなのに服装がけっこう自由だったり、入学間もないはずなのに赤点うんぬんといった電話がかかってきたり、リアリティが足りない印象でした。最後、幕が降り切る前にBGMが止まっていたのも気になりました。

「選択」というテーマをちゃんと演出的に配慮して上演されていたら、また違った印象を受けたかもしれません。

桐生高校「通勤電車のドア越しに」

作:金居 達(既成)
潤色:桐生高校演劇部
演出:後藤 潤一
※最優秀賞(関東大会へ)

あらすじ・概要

通勤電車のドアに顔だけ挟まれた男とその周りの人物が織りなすドタバタコメディ。

感想

すごく面白かった!

2005年の桐生南の上演で観ているのですが、その時より面白かった。人物がきちんと立っていて、リアクションがちゃんと取れている。それに加えてちゃんと演出されている。

気になったところとしてはドアをどかした後のポールが視覚的に分かりにくいことです。白や色つきの棒でも、昔の桐生南のように枠だけでも何でもいいのですが、もう少し分かりやすくしてもいいんじゃないかな。また、列車アナウンスを声でかき消すシーンは実際にかき消してほしかった。ミキサーでボリューム絞って中域少し下げれば聞き取りにくくなりますから(もしくは聞き取りにくい音加工をしておけば)十分可能だと思います。

それと暗転のテンポが少し悪かった。装置の転換はないのですから、もう少し早く処理できないものでしょうか。以前の桐生南はもっと手早く処理してた記憶があります(暗転しないで回想処理してたんだっけかな)。

カメラの少年が出てきますが、写真を撮る際フラッシュを炊いたほうがいいと思います。あと電車の椅子ですが少し大きいように見えました。椅子と分かりにくいので、欲を言えば左右に2つほしいし、もう少し固そうな座席に見せられないものでしょうか。

色々書いてしまいましたが、とても面白く、台本のアレンジもうまくされていて楽しめました。関東大会も頑張ってください。

伊勢崎清明高校「あさぎゆめみし」

作:小野里康則(顧問創作)
演出:岩田 里都

あらすじ・概要

中学の遠足登山の最中で谷に落ちてしまった啓太と姫川、そして熊谷。さてどうしよう。

感想

くまむしくらぶの啓太と姫川が成長して中学生になりましたというお話。「くまむしくらぶ」を知ってると「啓太と姫川、変わらないな」と少しニヤニヤできます。虫好きはまだ変わらないのか(苦笑)

人物がステレオタイプなのは相変わらずなのですが、台詞の間が悪いかなという印象です。リアクションがとれてない感じです。全体的にギャグの流れなのにあまり笑いが取れてないのはその辺が原因だと思います。

舞台装置の高いところと、全体を広げて落ちた後の場所を切り替えてるあたりはうまく処理してたなと思います。

説明的な台詞がやや目立ち、BGMもやや説明的で、体を打って動けないはずの人物が気づいたら普通に歩いていたり、色々と細かいところが気になりました。

頑張って演じられていたとは思います。

新田暁高校「七人の部長」

作:越智 優(既成)
潤色:青山 一也(顧問)
演出:有賀理中奈
※優秀賞(次点校)

あらすじ・概要

部活動予算会議に集められた7人の部長。予算案を承認して終わるはずが、削られた予算に拒否権を発動しようと言い出して……。

感想

これもとても有名な台本です。よく力が抜けて演じられ、リアクションがきっちりされていたので、とても面白く観ることができました。台本も過不足なくアレンジされていました。

まずきっちり部屋を作ってきていました。ちゃんとした部屋の装置で七人の部長を見たのは初めてかも。これだけモノがあると動きを付けにくいじゃないかと心配したのですが、左右にテーブルと離れた椅子を用意することでこれをうまく処理していて、動きを含めてしっかりと演出されていました。

例えば生徒会長が言い間違える演技とか、すごく難しいと思うのですがちゃんと成り立っていました。剣道部部長もアニメ部部長も、演劇部もみんなちゃんと性格が見える演技になっていて、とても良かった。

この台本は全体がコメディタッチなので終盤のシリアスシーン(生徒会長の想いのシーン)への流れがとても難しいのですが、これをきちんと成り立たせていました。

ラストシーンでスポットの下の紙切れが落ちたのは偶然なのか仕組んだのかわかりませんが、おおっと思いました。

欲を言えば、台本の問題もあるとは思うのですが演劇部の人のラストの流れはちょっと長いかなと感じてしまいました。生徒会長のシーンが一番の見せ場なのにそれが薄まってしまう。無くすというわけにはいかないかも知れないけど、重点をもっと生徒会長のシーンに置いて(時間を使って)演劇部の人のシーンはおまけ程度の扱いでよかったんではないかなとも思ってしまいました。全体的に、生徒会長をもう少し際だたせる演出をしてもよかったのかもしれません。劇のどの場面でも生徒会長が主役だと分かるように、あくまで生徒会長が主役なんだと分かるように。

序盤から装置から気合がぜんぜん違ったし面白かった。関東行けるかなと思っていました。上演おつかれさま。ラストシーンのBGMを連動させた処理うまかったです。

渋川女子高校「流星群」

作:品田 歩(既成)
演出:渋川女子高校演劇部

あらすじ・概要

宮沢賢治作の「銀河鉄道の夜」と「よだかの星」を混ぜてモチーフにしつつ、宮沢賢治についての創作劇。

感想

暗幕の手前に、白い幕を3つ垂らしたシンプルな装置で、ピアノBGMをふんだんに使って幻想的な演出をしていました。

たまたま「銀河鉄道の夜」を読んだ直後でして、題材となった2作がどのように省略されているのも見てて分かるぐらいだったのですが、それでも全体的に分かりにくい気がしました。

宮沢賢治の作品自体、現代の小説とか娯楽に比べると分かりにくい部分があるのですが、賢治作品のそういう「生死観」みたいものを浮かび上がらせ、なおかつそれを踏まえて「宮沢賢治」という人物に少し空想して迫ってみようという台本ですよね。後者はともかく、前者さえうまくいったとは言えないのではないかと感じてしまいました。

よく演じられていたとは思うのですし努力しているのもわかるのですが、幻想的に見せることは果たして本当に必要だったのかも含め、演劇としてもう1歩2歩進んでもらいたいなと思います。