太田市立商業高校「お葬式」

作:亀尾 佳宏

あらすじ・概要

おじいちゃんのお葬式。実感の湧かないトモコは友人2人と公園へ遊びに行く。やがて公園で、メダカのお葬式をしようということになり……。

感想

おさげの少女トモコと、格好いい少年のユウタ、ランニング姿の恰幅のいいヒロシ。この3人が織りなすドタバタ劇で、台詞のかけあいすごく楽しむことができました。素直に面白かった。公園でお葬式を始めるあたりから「次は何をしてくれるだろう」というワクワクで支配され、それを裏切らない笑いが楽しかった。どれもがとても秀逸。

台本の台詞が面白いこともありますが、かけあいが秀逸で台詞に対する反応(リアクション)がきちんと出来ていたこと、3人の人物の性格付けがきちんとされていたこと(演じられていたこと)、間を意識的かつ積極的に活用していたことが面白さを増大させたと思います。台本のダブルミーニング(1つの言葉で2つの意味をもつ言葉)を積極的にギャグ利用していたのは面白かったけど、それをちゃんと活用できてたのもうまかった。

そしてランニング姿のヒロシの圧倒的存在感が(笑)。もともとの体格もありますが、それに加えて演技とかも非常にうまい。ギャグキャラなのでヒロシの素朴さ(至って真面目であるという演技)が出ないとまったく笑えなくなります。この学校はそれをちゃんと演じていた。きわだって一人の演技がうまかったわけではなく、みんな演技がうまかったのだけど、おいしいところは全部ヒロシが持って行ってたなあ。

演技でいえば、ユウタの声が聞き取りにくいシーンが多かったのが残念でした。少年役ってことで難しいところはあるのでしょうが、テンション高く発声するシーンで(聞こえることが必要な台詞では)少しだけトーンを抑えてでも聞き取りやすくしてほしかった。

問題といえば、公演の装置がちょっと殺風景だったなあ。ゴミ箱、砂場、ちっぽけなベンチ、水道が広い舞台に散漫に置かれていたため公園らしく映らなかった。トイレ、街灯、フェンス、噴水などなど方法は色々ですが、もう少し公園らしく見せる工夫があったらもっと良くなったと思います。

全体的に

メダカがザリガニに食われて、弱肉強食からメダカのお葬式になり、色々なもののお葬式になり、子供達のギャグの流れでおじいさんのお葬式の式を挟み(このときトモコは止まっている)、夕方の公園でおじいちゃんのことを考えるトモコたち。「おじいちゃん焼かないで」というのは強く気持ちが出ているシーンで印象深かった。陽の落ち方と心情変化がリンクしていくのも良い演出です。

けれども、トモコの「おじいちゃん」や「おそうしき」に対する気持ちの変化がみえてこなかったのが残念な点です。最初と最後だけで、中盤が飛んじゃってるんだよね。最初と最後だって、本当のところどう思っているのかまではみえてこない。トモコの心情は最初と最後でどう変化したの? 最初のトモコの心情は? 最後に至るまでに何があったの? ここがうまく演出されたなら、言うこと無しだったなあ。

本の良さはともかく、演技の上手さが際立った上演でした。面白かった。