高田北城高校「五時から三十円引き」
ボケてしまったおばあさんとその面倒を見る家族とのお話。お姉さん(竹子)役の人が年齢に対してちょっと早口だったかなという印象がありました。竹子の人物像を考えると、もう少しトーン低めに話せたらよかったかもしれません。
ボケてしまったおばあさんとその面倒を見る家族とのお話。お姉さん(竹子)役の人が年齢に対してちょっと早口だったかなという印象がありました。竹子の人物像を考えると、もう少しトーン低めに話せたらよかったかもしれません。
大勢で動いて、踊りもある、群馬県だと桐生第一高校の形式に近い上演だなと感じながら見ていました。勢いがあってそこはすごくよかったのですが、やや台詞が聞き取りにくく感じました。滑舌とかの問題ではなく単に早口だった印象があります。少し声も小さかったかな。
脚本:内山 ユニ(創作)
潤色:柏崎高校 演劇部
演出:内山 由紀
地方の小島の、小さな洋服店。そこに、長男(?)が洋服の修行から何年かぶりに帰宅した。歓迎する温かい家族。そんなところへ迷い込んだ一人のいえで少年は、この島へ母親を探しに来たのだという。そんな少年すらも温かく受け入れる家庭。その家庭は、昔洪水のときに赤ん坊を家族として迎え入れたことがあるから普通のことなのだと。
またそんな折、親に恵まれい子供のための施設を運営する二人がその家庭に強盗(?)に訪れるが、やがて事情を話お金が必要だと一致する。そのとき島のお金持ちの後白河家が主催になって洋服コンテストがあり優勝すればお金が入るという情報が。親探しにきた少年の母親もそのお金持ちの家に関係あるようで、修行帰りの長男のコンテスト応募にみなが期待するわけだけども……。
終始ほんわかムードの本当に「田舎の温かさ」を前面に押し出した演劇です。そんな人たちと、少年の邂逅がある意味お話のメインです。
まず舞台なのですが、居間のセットが右手側にぽつんと置かれ、その周りにミシンやトルソーなどが見られます。お店または土間という設定みたいですが、居間の2面から出入りするためにその場所の位置関係というものが理解しにくい。どこが入り口なのかということはハッキリ3次元的に装置を使う方がよいと思いました。また空間がとびとびなので妙にだだ広く、温かい田舎というイメージとは反対に若干寂しい感じをうけたので、演出的に統一された方かよかったと思います。
話の内容からしてシリアスシーンがどうしても増えるのですが、進行役以外の人が棒立ちという状況が多々みられました。この高校も個性不足かな。また全体的に演技が弱く、気持ちから演じる(なりきる)ということをもう心がけて演じるとよいように感じました。結局のところ、探している母親は死んでしまっているのですが、それがわかったときの重さも出ていない。全体的にそんな感じです。
お話の作り(脚本)はというといまいち整理されてない印象で、温かい田舎のほのぼのしたムードをを書きたかったのはよくよく分かり演出面からも配慮されていたものの、ストーリー性、起承転結といった盛り上がりはないかなという感じでした。お話を作るには起承転結がやはりどうしても基本になってしまうと思いますので、まあ実際現状でも起承転結あるのですが「ストーリーの起伏」といった波を出せるとより良くなるかと感じました。とてもいいお話なんですが「いいお話」という印象以外に何も残らないのが難点のように感じました(印象に残りにくい)。でも、この劇はこれでよいと思います。
脚本:越智 優
潤色:新潟高校 演劇部
演出:岸 なつみ
卒業式のあと、夜中の教室。千鶴は、みんなを待っていた。やってくる友人達、舞子、サエ、玉井。何か話したいことがあり気なのに、何も言おうとしてない千鶴。そんな千鶴をよそに、わいわいと夜中の教室で騒ぎ始める3人たち。やがて千鶴もそこに加わって……。
検索してみると、中学・高校演劇において比較的よく扱われる脚本のようです。
終始真面目なお話作りなのですが、演技がなあ……という印象でした。友人達が和んで楽しんでるという印象がないんですよね。淡々と台詞を交換しているという感じにしか映りませんでした。特に秩父農工の演技を同じ日にみただけに、その差を歴然と感じてしまうというか。もっとオーバーにやっていいし、声からも楽しんでる様子が出ているとよかったと思うのですが……。例えば、普通に考えて友人同士が集まったら机をくっつけて話とか、椅子を近くに持ってきてとかあると思うんですが、そういう自分が友人達と話しているときに置き換えるとか昼休みの教室を観察するとか、とても単純なことだけど大切なことを見落としているように感じました。
舞台装置ですが、教室を横に見立てた作りで右手側に黒板なのは分かるのですが、向かって正面が一面の白壁。教室として通常は廊下側なら出入り口が、窓側なら窓があると思うのですが。出入りは向かって左側から行っていたのですか、いっそのこと壁すらなく演技で「あたかもあるように」みせてしまっても良いわけでしたし、どうにかならなかったのかと感じました。またラストシーンで白い花が花瓶に挿されていたのですが、そのもっとも象徴的な構図の真後ろに白衣に白セーターを着た先生が立つため花がぼやけるというのは失敗だと思います。そもそも白衣を着せたこと自体が安易だと思います(先生と記号的に見せたかったのでしょうが)。
劇を見ていると、千鶴がずっと何か思い詰めたかのような感じで進み、3人が「実は幽霊でした」という話の展開が起こるまで実に45分。そこに至るまで動きも本当に少なく、正直なところ見ていて飽きてきます。そのシーンに至るまでにいかに楽しそうに、そして観客を引きつけておくかが勝負なのですから、そういう演出的配慮がほしかったところ。あと基本的には、フリのような素振りをみせれば見せるほど、その量だけドンでん返しを観客は期待します。実は幽霊でしたでは納得しないんですよ、あれだけ意味深に振ってしまうとね。
すごく真面目に丁寧に作り込んできているだけに「勿体ないなあ」とひたすら感じた劇でした。次は「全体の演出」を念頭に頑張ってください。
脚本:大島 昭彦
演出:藤石 愛巳
※優秀賞(全国フェスティバル)
夢の世界と現実の世界と。夢の世界にいるもう一人の僕。そんな抽象的なイメージの中で現実と夢を行き来しながら描かれるものは。
非常に難しい抽象劇です。夢の中の僕と現実の僕。現実のフラストレーションが夢に昇華され、夢での出来事がまた現実に跳ね返る。主人公(高校生?)の日々の思いのかけらを拾い上げ描いていく作品なんだと思います。夢の中で工事現場監督かと思えば、学校の先生だったり、クラスメイトの(武者小路)祐子と親しくなったと思ったら夢だったり……。
優秀賞(フェスティバル)とのことですが、残念ながらとてもそうは感じられませんでした。全体に早口であり、間が悪く、テンポが一定でメリハリがない。リアクション(動作)もメリハリがない。そういう演技の基本や細かい嘘をきちんと積み上げてこそ、夢とも現実ともおぼつかない独特の空間にリアリティ(というと変ですが説得力とでもいいましょうか)が生まれるのですが、そこがないがしろにされ、劇空間としての成立が失敗したのではないかと思います。
台本を解釈なく(または解釈不足で)演じたという印象が非常に強く、台詞が役者を置いてきぼりにして一人歩きし、テーマを描ききれなかったという印象がぬぐえません。真に迫らないんですよね。主人公の「僕」が最初と最後で変わったんだということを、僕の内面として魅せてほしかったと思います。