桐生市立商業高校「アウトキャスト」

  • 作:新堀 浩司(既成)

あらすじ・概要

千草の中学時代の友人「利香」が千草の高校に帰って来る。しかし利香は、手紙で「千草が演劇部の部長」と誤解していて、その誤解を解けないまま千草は演劇部にやってきた。

感想

舞台奥にパネルを立て、パネル上手側にドアがあります。教室風の舞台ですね。両側を内幕で少し狭めています。舞台中央に机があり、上手に椅子が並べられていて、奥の壁側もに椅子やテーブルが置かれています。よく作ってありますね。

今時めずらしいパンフレットに部員がズラリという恵まれた学校です。それだけ居るのに「なんで演出居ない!」と叫びたい(苦笑)

千草と他の部員の微妙な関係が見えてくる演技良かったです。小間使いみたいに思ってたり、一目置いていたりという差がちゃんと付いててよかったと思います。台詞の間とかかなり気を使って演じていたと思います。

いくつか気になった点。

  • BGMの処理が雑。カットアウトじゃなくてフェードアウトのほうが良いよねというシーンがチラホラ。ラストシーンのBGMの使い方も酷い(なぜ途中で止めた? なぜ2曲?)。
  • 回想シーンでいちいち暗転するんだけど、暗転時間が長くテンポが悪いので、上下で照明を切り分けて「照明のついてないところは舞台の外」という進行が良かったと思う。
  • 先生、がんばってたけど、ちょっと先生っぽくないのは役者の関係で仕方ないかな(女の先生に変更してもよかった?)。

全体にコメディで、登場人物それぞれの思いの違いが錯綜して面白い台本だと思いました。でも、終盤の台詞が陳腐なのが難点。例えば、千草が利香に打ち明けるシーンで「いいよ説明しなくて。聞いたから全部」というのがあるのですが、せっかく打ち明けようとしている千草を「説明しなくていい」と止めるって利香酷すぎです。「大丈夫。わかってる」で「……(あぁ、聞いたんだ)」ぐらいのリアクションですよね。シリアスシーンの過剰な台詞ってシーンを壊しかねないのですが、それがとても多い。

こういう台詞の欠点は、ある程度演出でカバーすることも出来たとは思いますが、全体的にそういう演出や配慮がされている感じはしませんでした。コメディなのにシーンのメリハリが足りないのも、それが一因かなと思います。


いろんな人物が出てきて、ワクワクする楽しい上演でとてもよかったと思います。演技はとてもがんばっていたと思います。演出もがんばってください。

伊勢崎清明高校「コックと窓ふきとねこのいない時間」

  • 作:佃 典彦(既成)
  • 演出:狩野 美月

あらすじ・概要

豪邸の一室で主人であるネコの帰りを待つコックと、コックに気がある女と、女を引き戻すためにやってきた窓ふきの物語。

感想

上がベージュで下が木製の板が2面に貼られた部屋。中央にテーブルがあり、下手にブラインドと人が寝られるぐらいの白ベッド(ネコ用)、上手に白電話とドアと得。上手手前に白砂がある小箱(ネコ用トイレ)。レストランっぽい部屋でお屋敷感もあってがんばって作ってありました。ブラインドを常に閉じてましたが、演出上少し透ける方がよかった気も。

高校演劇用ではない、非常に面白い台本です。3人しか登場人物が居ませんが、この3人がそれぞれ関係性を持っていて、それぞれ思惑が違い、その設定だけでも面白い。

コックの演技とてもよかったです。迫力があって発声もしっかりしていて人物も立っていました。コックとくらべてしまうと、あとの2人は少し演技が負けてました。大人(の役者)を前提とした本なので、大人の落ち着きや嫌味っぽさみたいのが出ないと、なかなか成立しないのです。女はもっと「品のある奥様」風で、窓ふきはもっと「嫌味な大人」として演じられたらよかったかな。まず発声不足かな。コックと同じぐらいのしっかりした腹式発声が出来ていたら、それだけでも見違えたかも知れません。

作ってる側は多分そういう問題は分かっていてここが限界だったということなのでしょう。作り込まれた劇で相対的にはレベルも高かったと思います。上演おつかれさまでした。

新田暁高校「メレンゲな昼下がり」

  • 作:青山 一也(既成)
  • 演出:斎藤 愛翔

あらすじ・概要

ある日の昼下がり、ダラダラと会話をする夫婦のお話。

感想

検索すれば台本が出てきますが、エチュードのような内容で日常のゆるっとした会話が続きます。上演時間約30分。

舞台奥の上下の白板を立てて、ブラウン管テレビとか、棚とか、服掛けとか置かれたお部屋の設定。空間の広さに対してものが少ないので、閑散とした印象もありました。

男と女が出てきますが、講評でも言われてたとおり夫婦には見えなかった。格好とか工夫するだけでも変わったと思いますが、二人の演技(関係性)が母親に食事をねだる息子って感じでした。夫婦の距離感や会話トーンではないよね。夫婦という関係を前提に演技を組み立てるか、いっそ親子に変更してもよかったのではないでしょうか。いずれにせよ、普段から仲が良いとか、実はよく喧嘩する関係とか、女の方が強いとか、そういう関係性を作り込んでそれが見えてくると良かったかと思います。

概ね「観客が男の台詞を理解する前に女が反応している」ので不自然でした。男の言葉を理解しないで反応していることになるので……。男の方はちょっとおとぼけな感じで演じていて、女の方は比較的しっかりした感じの演技だったのですが、人物の演じ分けはこれで本当に良かったのか少し考えてほしいと思います。男を普通に演じても良かったのでは。

ゆったり感を出したいからと、全体をゆったりさせてしまうと「ただただ間延び」してしまいますので、メリハリを付けて進行させてもよかったと思います。

部員2名とのことで色々大変ではあったと思いますが、今後もがんばってください。

高崎商科大学附属高校「8月5日(晴れ)」

  • 作:高崎商科大学附属高等学校演劇部(創作)
  • 演出:櫻井 桃夏
  • 優秀賞(関東大会へ)

あらすじ・概要

大学生4年生になった高校時代の仲良し5人が集まって、山小屋に泊まりに行った。そこでの行われる会話劇。

感想

木の板を貼り合わせ作ったように見える見事な山小屋セットでした。手前が床になっていて壁は奥の出入り口面だけ。奥の壁側に服掛け、上下に長椅子という様子で、空間を狭く区切ったのもムードが出てて良いですね。

内容は特になく「今どうしてる?」「昔はこうだったよね」という感じで進む会話劇です。会話をしながら、きちんと話す人の顔をみて、リアクションもちゃんと出来ていて、台詞まわしもとても自然。山小屋での女子会って感じにも取れますね。演出がかなりしっかりされています。観ながら「外が雨の気分」になってきました。

気になったところとしては、講評でも指摘されていましたが雨音の処理ですね。ただまあずっと鳴らしておくのは邪魔なので、講評のアイデアのとおり扉あいたときだけ聞かせるのもアリかもしれません。あとヘッドライトでは小屋全体明るくならないよねというのも同じく気になりました。

非常によく演じられていてレベルも高いのですが、ちょっと難点を挙げると「ただの会話」なので終盤まで引きつけるものがありません。王様ゲームとかみせられても何を楽しんで良いのか困ります。一人だけ、メンバーに禍根を持つ人物が居るのですが、それも比較的序盤で解決してしまい、中盤少し飽きてくるのが問題ですね……。

もっと言いたいけど言えないことがあるとか、小屋の中に不思議なもの(不自然なもの)が置いてあるとか、小屋に不思議な点があるとか、何かしら話を引っ張る仕掛けがほしかった。もしくは、惹きつけるほどに魅力的な会話内容にブラッシュアップするとか(難しいですが……)。

ラストシーンとの絡みを考えると、小屋の中の不思議なアイテムをおいて、あれこれ想像を膨らませた挙句に、結局最後にあっけなく壊れているとか……あんまり良いアイデアではないか。これだけ演じられるなら「ただ仲が良い」だけではなくて、もっと色々な5人の関係性をみてみたかった。タイトルについて少し調べてみたのですが、8.5水害あたりなのでしょうか。

まさかそんなオチ!という衝撃はありましたし、全体の演技もよく出来ていたと思います。関東大会がんばってください。

四ツ葉学園「サクラの、その。」

  • 作:高場 光春(既成)
  • 演出:四ツ葉学園演劇部

あらすじ・概要

高校受験の合否の報告を会議室で待つ先生。最後にちえりが報告に来ない。ちえりが来るのを待つ、先生と友人のりょうこだったが……。

感想

「サクラの、その。」は旧太田商業(現市立太田)以来の2度目の観劇です。以前にも書いたことですが、台本の作りが悪くて、特に台詞のセンスがないんですよね……。この上演もそれに足を引っ張られた感はありました。二人の言い合いを止めない先生とか、電話で入学辞退とか、序盤ちえりいつ出てくるの?とかとか。

舞台はホリにして、会議室にある長テーブル2つが中央で合い向かいに。上下(かみしも)にパイプ椅子2脚ずつ。下手奥になぜか長テーブルと生徒用の椅子が置かれています。どうやらベランダという設定で、机はベランダの塀のようです。舞台への出入りは常に上手から。

何度となく素通りでベランダ(という設定の下手奥)に出入りするのですが、これがさっぱり分かりませんでした。会議室の構造とベランダの位置関係はどうなってるの? ドアはどこにあるの? そういう配慮が一切なされていませんでした。

また、机の上(ベランダの塀?)に立つシーンで「危ない」と言っているんだけども、そんな危ない場所に椅子置いてあるってどういうこと? 危ないという台詞はあっても、人物の動きがそこが危険な場所であることを全く示してないので、リアリティがない。それだと嘘になってしまうんです。

最初にも述べたとおり、台本の問題が致命傷に近いのですが、それでもとてもがんばって演じていました。間ややり取りにとても気を使っていました。台詞もよく聞き取れました。上演おつかれさまでした。