前橋南高校「狩野■Kanou県 」

妹の椅子が舞台中央にあり、姉の椅子が舞台よりやや下手にあるので、椅子の中心が舞台中心からずれているのがなんとも気持ち悪く感じてしまいました。サスの関係なのかもしれませんが、県大会はこうではなかったような気が……。全体的に県大会のほうが面白かったなという印象が拭えません。

照明設備の関係はあるのでしょうが、夜な夜な出てくる女がハッキリ認識できるまでの時間が遅くなってしまい、この夜のシーン用のスモークが女まで届いてなかったり、また椅子位置の関係からリサイクル業者の出入りや玄関などの位置が不自然(窮屈)で、リサイクル業者の男が妹に色目を使うシーンの「キラッ」音などのSEがやや小さく、なんとも不恰好に感じられました。

舞台が広くなったのか姉が若干早足になっていたのが気になった以外は演者に問題はなかったと思うのですが、照明、音響、スモークなどのスタッフワークの部分での粗が目立ち、前橋南独特の世界観の構築に失敗しているように感じられました。おそらくシルクホールに不慣れだったためでしょう。たったそれだけのことでこれだけ印象が変わってしまうのだから、普段県大会で見せるあのクオリティは絶妙なバランスの上に成り立っているのだと、あらためて実感しました。

さくら清修高校「自転車道行曾根崎心中」

教室に自転車で集合ということで度肝を抜かれました。この発想力は素直に称賛したいです。動かない銅像のクラスメイトは原発のメタファーで学校は市町村のメタファーなんだと思いました。講評で指摘されていましたが、これがわかると全部がすごく皮肉です。しかし、上演後の観客席の様子だと「よく分からなかった」人が多かったみたいで勿体無いかな。

主題となっていた古文(詩?歌?)もおそらく内容の何かとリンクしているのだと思うのですが、現代語でもないことも相まって内容がよく伝わってきませんでしたが、どこか底知れぬ怖さはありました。

丸子修学館高校「K」

カフカの「変身」をやりたかったという部員の方たちが、カフカ作の「変身」「城」「審判」を題材かつエチュードにしながら、カフカの人物像に迫る演劇(wikipediaによるカフカの説明)。多人数でカフカの不条理エチュードを挟みつつ、コメディのノリでウケを取りつつ、それでいながらカフカの人物像を描き出していくという非常に面白い上演でした。

カフカの変身は以前高校演劇でみたことがあったため、とても興味深くみてました。抽象的なセットも見事だったですし、エチュードをバラバラにしながらもひとつの魅力的な話筋としてまとめあげた力量には感服するばかりです。ちゃんと三作品のあらすじ紹介にもなっているのだからすごい。これを見れただけでも、関東大会見た甲斐がありました。(追記。案の定、最優秀賞でした)

新島学園高校「厄介な紙切れ -バルカン・シンドローム-」

関東大会だから教室のパネルぐらい用意するんだろうなと思ったら、本当に用意してきたあたりは期待を裏切りません。途中黒板の留め具の片方が落下という事故もありましたが、動じず、後半にはネタにする余裕はさすがのものでした。あの傾いた黒板は冷静に考えると笑いそうになってしまいましたが(苦笑)、同時にもう片方も外れて事故にならないことを祈ってました。

県大会と終盤の流れを変えて話を整理したこと、紙切れをちゃんと最後のオチに持ってきたこと、県大会で指摘した先生が先生らしくないのが修正され(ちゃんと先生見えまたよ!)、確実に進化していました。教室もパネルがあることで、オープンスペース(教室の壁がないタイプ)と分かるようになっていました。よかったです。