桐生第一高校「十一夜」

作:秋野トンボ(顧問創作)
潤色:山吹 緑
演出:清水 拓道

あらすじ・概要

文化祭当日。ロミオとジュリエットの上演準備中の演劇部。そこに1人の転校生がやってきた。転校生と一緒に古い舞台の資料を整理していると、ある小道具が転がってしまう。それを拾った瞬間、転校生すみれと星名は心と体が入れ替わってしまった。これから本番の上演があるのにどうすれば!?

感想

幕開いて立派なセットが組まれていました。本当にロミオとジュリエットの上演で使うセットなのかなあと思わせるぐらい。高いパネルで城壁っぽいものが舞台左右に3枚。中央にレンガ風の高さ1mぐらいの段があり、その手前に3段のはしご階段(いつも桐一が使うもの)。上手に白いクロスがかけられたテーブルがあり、その上の果物が置かれています。いつもながらに舞台美術は見事です。

桐一久しぶりの現代劇で、大勢の人間がわーって動くあたりさすがの上演でした。大人数が結構ワイワイと動くのですが、校内放送含めややワイワイし過ぎで、どこを見せたいのかわからなくなる場面が序盤ありました。もう少し整理されてもいいのかも知れません。星名とすみれ、あと部長と高橋(すみれの彼氏)ぐらいが誰か分かればよい劇で、逆に言えばその他の端役の人物は意味があったのかなとも感じられました。最初から出してしまったので劇全体をわかりにくくしたようにも感じました。それと泰子先生がちょっと演技演技しすぎかな。先生っぽさがあまりなかった。

全体的に演技が甘い部分が目についた気がします。コメディの間としてはやや中途半端で、かといってリアルにもなってない。動作もやりきってない部分が多い。しようとして止まる、歩こうとして振り返る。もう次が予測された動きになってしまったところも多々見受けられました。

物語のキーとなる星名とすみれは非常に気を使って演じられており、入れ替わったことがちゃんと分かるものでした。良かったと思います。入れ替わりを照明と音で示すのもわかりやすい演出であったと思います。でも、この2人の変化に深く突っ込まない他の部員たちはご都合主義に感じられました。いくら何でもおかしいとおもうでしょう。

細かいところですが、バルコニーのシーンで星名がすみれに台詞を教えているのですが、あそこまであからさまに客席にはっきり聞こえる声の大きさで台詞を教える必要はありましたか。小声でなるべくほかの部員に聞こえないように教えますよね。客席に聞こえる必要はないですよね。それより前のすみれのおじさんとのシーンでは、うなずくことで意思を伝えていてこれがうまくできてたのにもったいない。

全体的に

台本がご都合主義すぎるかなと感じます。「ロミオとジュリエットぐらい演劇部なら知ってるでしょう!!」……本当にそうなのでしょうか。上にも述べたけど、入れ替わった二人に突っ込まない気づかないなんてことありえるでしょうか。逆に言えば、バレそうでバレないという遊びをもっと取り入れることはできたのではないでしょうか。すみれと星名は入れ替わったことでそれぞれ学んだってオチなのですが、上演中に何か学んで進歩してましたか。台本の欠陥だと感じます。もっと他のエピソードを整理して「星名とすみれ」にスポットすることはできたのではないでしょうか。今のままでは、このままだと終われないので無理やり作ったオチという感じが拭えません。あと説明台詞が多いのが気になった。それ本当に観客に説明しないと物語成立しないこと?

色々批判的に述べてはしまいましたが、大人数がわいわいとやる演劇は見ていても楽しく観ることができました。講評で指摘があったように、少し内容を整理すれば化けるかと思います。