高崎健康福祉大学高崎高校「Colors」

  • 作:今井 清光(既成)
  • 演出:白石 佳鈴、牛木 智花

あらすじ・概要

舞台は塾。涼という男子を巡って、思いを寄せる女子たちが織りなすコメディ劇。

感想

舞台下手に黒い合皮のイス、奥にカラーBOXとパンフレット置き、中央から上手にかけてテーブル2つ、一番上手にホワイトボード。背景は全面ホリ。最初は「ここどこだろう?」という感じはありましたが、塾のラウンジとのことでした。それっぽくはあります。

細かいところですが、気になったところ。

  • 電話の呼び出し音の2コール目の音がゆがんでいて、気になってしょうがなかった。
  • シーンの途中で昼から夜に変わるところで、手持ちの「昼の絵パネル」を裏返して「夜の絵パネル」というシーンがあったのですが、あまりに説明的すぎるので止めたほうがよいと思いました。ホリの色を変えるだけで十分かな。
  • 沙樹が涼に数学の問題を聞くシーンで適当に台詞だけ言ってる印象がありました。実際の問題を想定してちゃんと理解して説明してましたか? その後の涼が沙樹に説明していたシーンは、それがきちんと出来ていました。

全体的にコメディなんですが、コメディ難しいですね。結構メリハリに気を使って笑えるようにしていました。笑えるところなのに進行しちゃってて笑えなかったシーンがいくつかあって勿体なかった。間をもっと取っても大丈夫ですよ。あとやはり男子が何人か居るとコメディやるのは強いですね。ビンタも最高。演出は更にオーバーにしてもよかったのかも。

上演45分ですが、他校の60分の上演よりも濃密で楽しい時間でした。今大会で一番笑えて面白かったです。上演おつかれさまでした。

桐生市立商業高校「アウトキャスト」

  • 作:新堀 浩司(既成)

あらすじ・概要

千草の中学時代の友人「利香」が千草の高校に帰って来る。しかし利香は、手紙で「千草が演劇部の部長」と誤解していて、その誤解を解けないまま千草は演劇部にやってきた。

感想

舞台奥にパネルを立て、パネル上手側にドアがあります。教室風の舞台ですね。両側を内幕で少し狭めています。舞台中央に机があり、上手に椅子が並べられていて、奥の壁側もに椅子やテーブルが置かれています。よく作ってありますね。

今時めずらしいパンフレットに部員がズラリという恵まれた学校です。それだけ居るのに「なんで演出居ない!」と叫びたい(苦笑)

千草と他の部員の微妙な関係が見えてくる演技良かったです。小間使いみたいに思ってたり、一目置いていたりという差がちゃんと付いててよかったと思います。台詞の間とかかなり気を使って演じていたと思います。

いくつか気になった点。

  • BGMの処理が雑。カットアウトじゃなくてフェードアウトのほうが良いよねというシーンがチラホラ。ラストシーンのBGMの使い方も酷い(なぜ途中で止めた? なぜ2曲?)。
  • 回想シーンでいちいち暗転するんだけど、暗転時間が長くテンポが悪いので、上下で照明を切り分けて「照明のついてないところは舞台の外」という進行が良かったと思う。
  • 先生、がんばってたけど、ちょっと先生っぽくないのは役者の関係で仕方ないかな(女の先生に変更してもよかった?)。

全体にコメディで、登場人物それぞれの思いの違いが錯綜して面白い台本だと思いました。でも、終盤の台詞が陳腐なのが難点。例えば、千草が利香に打ち明けるシーンで「いいよ説明しなくて。聞いたから全部」というのがあるのですが、せっかく打ち明けようとしている千草を「説明しなくていい」と止めるって利香酷すぎです。「大丈夫。わかってる」で「……(あぁ、聞いたんだ)」ぐらいのリアクションですよね。シリアスシーンの過剰な台詞ってシーンを壊しかねないのですが、それがとても多い。

こういう台詞の欠点は、ある程度演出でカバーすることも出来たとは思いますが、全体的にそういう演出や配慮がされている感じはしませんでした。コメディなのにシーンのメリハリが足りないのも、それが一因かなと思います。


いろんな人物が出てきて、ワクワクする楽しい上演でとてもよかったと思います。演技はとてもがんばっていたと思います。演出もがんばってください。

伊勢崎清明高校「コックと窓ふきとねこのいない時間」

  • 作:佃 典彦(既成)
  • 演出:狩野 美月

あらすじ・概要

豪邸の一室で主人であるネコの帰りを待つコックと、コックに気がある女と、女を引き戻すためにやってきた窓ふきの物語。

感想

上がベージュで下が木製の板が2面に貼られた部屋。中央にテーブルがあり、下手にブラインドと人が寝られるぐらいの白ベッド(ネコ用)、上手に白電話とドアと得。上手手前に白砂がある小箱(ネコ用トイレ)。レストランっぽい部屋でお屋敷感もあってがんばって作ってありました。ブラインドを常に閉じてましたが、演出上少し透ける方がよかった気も。

高校演劇用ではない、非常に面白い台本です。3人しか登場人物が居ませんが、この3人がそれぞれ関係性を持っていて、それぞれ思惑が違い、その設定だけでも面白い。

コックの演技とてもよかったです。迫力があって発声もしっかりしていて人物も立っていました。コックとくらべてしまうと、あとの2人は少し演技が負けてました。大人(の役者)を前提とした本なので、大人の落ち着きや嫌味っぽさみたいのが出ないと、なかなか成立しないのです。女はもっと「品のある奥様」風で、窓ふきはもっと「嫌味な大人」として演じられたらよかったかな。まず発声不足かな。コックと同じぐらいのしっかりした腹式発声が出来ていたら、それだけでも見違えたかも知れません。

作ってる側は多分そういう問題は分かっていてここが限界だったということなのでしょう。作り込まれた劇で相対的にはレベルも高かったと思います。上演おつかれさまでした。

新田暁高校「メレンゲな昼下がり」

  • 作:青山 一也(既成)
  • 演出:斎藤 愛翔

あらすじ・概要

ある日の昼下がり、ダラダラと会話をする夫婦のお話。

感想

検索すれば台本が出てきますが、エチュードのような内容で日常のゆるっとした会話が続きます。上演時間約30分。

舞台奥の上下の白板を立てて、ブラウン管テレビとか、棚とか、服掛けとか置かれたお部屋の設定。空間の広さに対してものが少ないので、閑散とした印象もありました。

男と女が出てきますが、講評でも言われてたとおり夫婦には見えなかった。格好とか工夫するだけでも変わったと思いますが、二人の演技(関係性)が母親に食事をねだる息子って感じでした。夫婦の距離感や会話トーンではないよね。夫婦という関係を前提に演技を組み立てるか、いっそ親子に変更してもよかったのではないでしょうか。いずれにせよ、普段から仲が良いとか、実はよく喧嘩する関係とか、女の方が強いとか、そういう関係性を作り込んでそれが見えてくると良かったかと思います。

概ね「観客が男の台詞を理解する前に女が反応している」ので不自然でした。男の言葉を理解しないで反応していることになるので……。男の方はちょっとおとぼけな感じで演じていて、女の方は比較的しっかりした感じの演技だったのですが、人物の演じ分けはこれで本当に良かったのか少し考えてほしいと思います。男を普通に演じても良かったのでは。

ゆったり感を出したいからと、全体をゆったりさせてしまうと「ただただ間延び」してしまいますので、メリハリを付けて進行させてもよかったと思います。

部員2名とのことで色々大変ではあったと思いますが、今後もがんばってください。

新島学園高校「そうさくⅢ」

  • 作・潤色:大嶋昭彦(既成/顧問)
  • 演出:渡邉 宥介
  • 優秀賞

あらすじ・概要

舞台は演劇部部室。創立70周年記念祭まで1週間。上演する台本がまだ決まっていない。顧問は風邪で早退して逃げられた。上演内容の提出を求めてくる生徒会長と副会長。急いで台本を作らなければならなくなった部員たちは……。

感想

2009年の上演時は最優秀賞。設定は60周年で今回は70周年。今回「Ⅲ」なので多分「2」もあったんだと思いますが、どうなんでしょう。

舞台ですが、黒幕を引いて部屋の2面の壁を用意しています。下手から衣装かけ(衣装あり)、コルクボード、ブラインド(後ろがすけし通る人や空の色が見える)、スチールラック、上手面には出入り口、部の標語、そしてなぜか赤いハシゴ。

県大会常連だけあって安定した作りと演技です。服を青、緑、赤で分けたり、人物を分かりやすくする配慮もしてあります。舞台装置は例年どおり作り込んでます。ブラインド越しの空色を「青」「オレンジ」「白」と変えて時間を表現するのもにくいです。

基本はコメディ劇で、随所で笑ったりできる楽しい舞台でした。本当に基礎的な演技力の高さを感じさせます。生徒会副会長の女子の動きや立ち振舞がキリってしていて、よく性格出てて面白かったです。漂う「みんなとは違うんだ、巻き込まれてるだけなんだ」感。

なんで最優秀賞じゃないんだとなると、コメディにしてはそこまで笑えなかったことでしょうか。この台本って中身のほぼないコメディだけの本なのですが、コメディ演出って難しいんですよね。例え間やタイミングが完璧でも、動きが伴わないと面白くない。キャラ立ちも必要だったり緩急や裏切りがちゃんとできてないと面白くない。

全体的にエネルギッシュで細かい完成度の高い上演でした。おつかれさまでした。

12/2追記

ようやく思い出したのですが、2009年の上演ではコメディの中でも部長の想いに焦点が当たっていて、「状況に翻弄される部長」という主役としての存在感があり、また人物も主役として立派に立っていました。しかし、今回の上演では台本が変更された影響もあるかと思いますが、部長が主役ではなく一部員という立場(演出)になり、コメディ色が強くなっています。

つまり「状況に翻弄される部長たち」という主軸が「状況に翻弄されるコメディ」に置き換わり主軸がどこかに行ってしまいました。しかしながら「爆発力があり、とんでもなく面白い」というほどコメディに振り切ってもいない。とすると、結局この上演は「笑えたは笑えたけど何だったんだろう」となってしまう。そこが能力はあるのに最優秀賞に至らなかった原因かなと感じました。

台本を読み込み、観客に何を楽しんでもらうのか。何を観客に表現するのか。それをもっと徹底的に突き詰めていく(議論する)ことが新島には必要なのかもしれません。