さくら清修高校「自転車道行曾根崎心中」

教室に自転車で集合ということで度肝を抜かれました。この発想力は素直に称賛したいです。動かない銅像のクラスメイトは原発のメタファーで学校は市町村のメタファーなんだと思いました。講評で指摘されていましたが、これがわかると全部がすごく皮肉です。しかし、上演後の観客席の様子だと「よく分からなかった」人が多かったみたいで勿体無いかな。

主題となっていた古文(詩?歌?)もおそらく内容の何かとリンクしているのだと思うのですが、現代語でもないことも相まって内容がよく伝わってきませんでしたが、どこか底知れぬ怖さはありました。

丸子修学館高校「K」

カフカの「変身」をやりたかったという部員の方たちが、カフカ作の「変身」「城」「審判」を題材かつエチュードにしながら、カフカの人物像に迫る演劇(wikipediaによるカフカの説明)。多人数でカフカの不条理エチュードを挟みつつ、コメディのノリでウケを取りつつ、それでいながらカフカの人物像を描き出していくという非常に面白い上演でした。

カフカの変身は以前高校演劇でみたことがあったため、とても興味深くみてました。抽象的なセットも見事だったですし、エチュードをバラバラにしながらもひとつの魅力的な話筋としてまとめあげた力量には感服するばかりです。ちゃんと三作品のあらすじ紹介にもなっているのだからすごい。これを見れただけでも、関東大会見た甲斐がありました。(追記。案の定、最優秀賞でした)

新島学園高校「厄介な紙切れ -バルカン・シンドローム-」

関東大会だから教室のパネルぐらい用意するんだろうなと思ったら、本当に用意してきたあたりは期待を裏切りません。途中黒板の留め具の片方が落下という事故もありましたが、動じず、後半にはネタにする余裕はさすがのものでした。あの傾いた黒板は冷静に考えると笑いそうになってしまいましたが(苦笑)、同時にもう片方も外れて事故にならないことを祈ってました。

県大会と終盤の流れを変えて話を整理したこと、紙切れをちゃんと最後のオチに持ってきたこと、県大会で指摘した先生が先生らしくないのが修正され(ちゃんと先生見えまたよ!)、確実に進化していました。教室もパネルがあることで、オープンスペース(教室の壁がないタイプ)と分かるようになっていました。よかったです。

桐生第一高校「十一夜」

作:秋野トンボ(顧問創作)
潤色:山吹 緑
演出:清水 拓道

あらすじ・概要

文化祭当日。ロミオとジュリエットの上演準備中の演劇部。そこに1人の転校生がやってきた。転校生と一緒に古い舞台の資料を整理していると、ある小道具が転がってしまう。それを拾った瞬間、転校生すみれと星名は心と体が入れ替わってしまった。これから本番の上演があるのにどうすれば!?

感想

幕開いて立派なセットが組まれていました。本当にロミオとジュリエットの上演で使うセットなのかなあと思わせるぐらい。高いパネルで城壁っぽいものが舞台左右に3枚。中央にレンガ風の高さ1mぐらいの段があり、その手前に3段のはしご階段(いつも桐一が使うもの)。上手に白いクロスがかけられたテーブルがあり、その上の果物が置かれています。いつもながらに舞台美術は見事です。

桐一久しぶりの現代劇で、大勢の人間がわーって動くあたりさすがの上演でした。大人数が結構ワイワイと動くのですが、校内放送含めややワイワイし過ぎで、どこを見せたいのかわからなくなる場面が序盤ありました。もう少し整理されてもいいのかも知れません。星名とすみれ、あと部長と高橋(すみれの彼氏)ぐらいが誰か分かればよい劇で、逆に言えばその他の端役の人物は意味があったのかなとも感じられました。最初から出してしまったので劇全体をわかりにくくしたようにも感じました。それと泰子先生がちょっと演技演技しすぎかな。先生っぽさがあまりなかった。

全体的に演技が甘い部分が目についた気がします。コメディの間としてはやや中途半端で、かといってリアルにもなってない。動作もやりきってない部分が多い。しようとして止まる、歩こうとして振り返る。もう次が予測された動きになってしまったところも多々見受けられました。

物語のキーとなる星名とすみれは非常に気を使って演じられており、入れ替わったことがちゃんと分かるものでした。良かったと思います。入れ替わりを照明と音で示すのもわかりやすい演出であったと思います。でも、この2人の変化に深く突っ込まない他の部員たちはご都合主義に感じられました。いくら何でもおかしいとおもうでしょう。

細かいところですが、バルコニーのシーンで星名がすみれに台詞を教えているのですが、あそこまであからさまに客席にはっきり聞こえる声の大きさで台詞を教える必要はありましたか。小声でなるべくほかの部員に聞こえないように教えますよね。客席に聞こえる必要はないですよね。それより前のすみれのおじさんとのシーンでは、うなずくことで意思を伝えていてこれがうまくできてたのにもったいない。

全体的に

台本がご都合主義すぎるかなと感じます。「ロミオとジュリエットぐらい演劇部なら知ってるでしょう!!」……本当にそうなのでしょうか。上にも述べたけど、入れ替わった二人に突っ込まない気づかないなんてことありえるでしょうか。逆に言えば、バレそうでバレないという遊びをもっと取り入れることはできたのではないでしょうか。すみれと星名は入れ替わったことでそれぞれ学んだってオチなのですが、上演中に何か学んで進歩してましたか。台本の欠陥だと感じます。もっと他のエピソードを整理して「星名とすみれ」にスポットすることはできたのではないでしょうか。今のままでは、このままだと終われないので無理やり作ったオチという感じが拭えません。あと説明台詞が多いのが気になった。それ本当に観客に説明しないと物語成立しないこと?

色々批判的に述べてはしまいましたが、大人数がわいわいとやる演劇は見ていても楽しく観ることができました。講評で指摘があったように、少し内容を整理すれば化けるかと思います。