まとめ感想 - 2009年度 群馬県大会

今年の入賞は隙のない上演が選ばれたようです。つまり欠点の少なさから順位付けされたんじゃないかなという印象を持ちましたが実際のところは分かりません。例年以上に僅差だったことは間違えないでしょうし、桐南については上演時間61分のために関東進出をのがしたのかなとも邪推したくもなりました。

そんなわけで今年もまたレベルがあがり、そして太田フレックス・新島・桐生第一・桐生南・前橋南の5校については独自の色を持ち始めている(劇団と呼んでもよい具合になっている)ため、顧問の影響は大きいにしろ県大会はそれだけ面白く、そして激戦になっています。何年か前なら簡単に(どんな審査基準でも迷われることなく)県を突破できただろう作品を上演しても県大会を突破出来ない。場合によっては入賞すらできない。高女・共愛全盛期の群馬県勢も(全国的に)有名だったようですが、ここから何年かは新たな群馬勢として他県にも知れていくのでしょうか。

どの上演校も「台詞や演技の間」についてしっかり意識していたことは大変凄いことです。数年前は大半の学校が台詞の間など意識してなかったのですから。そしてついにと言うべきか、いよいよと言うべきか、待ちに待ったと言うべきか、劇解釈や演出を本格的にはじめた高校が現れたことも驚きでした。長年口を酸っぱくしてネットに感想を書き続けた身としては嬉しくもあり、同時にこれからは益々感想が大変だなあと感じています。結局考えたの戦いになるわけですから、それこそ慎重に書かねば「なんだこの感想書いた人何も分かってない」となってしまうわけです。より一層の緊張感を持って挑みたいと思います。

今年は、個人的な各校評価と審査員の下した評価には大きな隔たりがあります。今年の審査員の評はとても的確でした。的確すぎてここに感想書くのやめようかなと思ったぐらいです(苦笑)。ですので審査員の評になびく方が安心ではありますし気も楽です。でも観劇した人が違うのだから感想の差は仕方ない。場合によっては感想が的はずれだと笑って頂いて構わない。何言ってるんだと文句を言って頂いて構わない(みなさんにはその権利があるでしょう)。それでも、そういう感想を持った人が一人は居たのだと気に留めて頂ければ幸いです。

2009年11月16日 記

2009年度 群馬県大会

まとめ感想 - 2008年度 群馬県大会

約1年ぶりの観劇でしたが、とても楽しませて頂きました。公演されたみなさん本当にありがとうございます。そしておつかれさまでした。

入賞について。今年は自信を持って「基準が違えばガラリと入賞校が変わった」と断言できます。だから入賞しなかったみなさんも落ち込む必要はまったくありません。ここのところ毎回書いていますが、上演校全体のレベルの底上げが今年も大きく感じられました。みんな本当に上手くなっています。これはすごいことです。

例えば、ほんの少し前まで「声が聞こえない」「暗転だらけ」「BGMだらけ」「不自然すぎる台詞」(実際にあり得ない説明的すぎる台詞など)といった基本的なことがクリア出来ていない上演がたくさんあり、講評でもよく指摘されていました。今年は該当する上演がまったくみつかりませんでしたし、事実講評でもこれらの指摘はほとんど無かったと記憶しています。

入賞校についての判断が難しくなったというのは、(全体のレベルがあがり)突出した学校が居なくなったと言えます。つまり、どの学校もあと少しだけ上達すれば関東に行けます。講評を聞いていて分かったと思うのですが、どの学校もまったく同じことを指摘されていました。あとはそれをクリアするかしないかだけの差です。

以下に、やや違う角度から総評として出来るだけ丁寧に解説しますので、もしよければ参考にしてください。みなさんの今後の活躍を心より期待しています。

2008年11月11日 記

県立前橋高校「そばや」

作:仲谷 憲(生徒創作)
演出:(表記なし)
※最優秀賞(関東大会へ)

あらすじ・概要

「学校帰り、そばやを営む友人の家で、塾までの時間を潰してたりする少年達の話」(パンフレットより)

感想

舞台には、左手に扇風機、中央に白い布をかけただけの長テーブルと椅子5脚しかありません。シンプルな舞台装置。そこで演じられるのは、男数人のうるさく元気な演劇です。役名が、役者の名前(愛称)からそのまま取られているらしく、当て書きだと思われます。当て書きの効果か、掛け合いや会話がとてもよく演じられています。ゆるみの演技、そこにその人物が居るんだという実在感、難しい言葉で言えば演劇のリアルがとても高い完成度で繰り広げられます。本当にこんな男子生徒居るよな、そんな男どもが本当にそこで会話しているよなっていうノリです。そして、笑いを取るための、会話の裏切り方は特に秀逸でした。

男子生徒たちのテンポの良い何気ない会話から笑いを取りつつ物語は進みます。劇中2回、未来に暗転させるのですが、1回目が明るい未来で、2回目が(1回目の数年後の)暗い未来です。そうして最後には「未来は自由だ」という感じで話がまとまり、そばやからみんな塾に向かうのですが、どことなく哀愁が漂います。

気になったのは荒さでした。例えば、コップに水を入れて運んでくるシーンがあるんですが(実際にコップはない)、その動作がいい加減で到底コップがあるようには見えません。そのコップの水を飲むところも一緒。せっかくこれだけリアルを演じているのですが、細かい部分までリアルを追求してください。あと未来と現在を区別させるために、舞台上に何かを物を置いてそれを変化させるという手が使えます。例えば、白い布が古びた布になるとか。現状では、現実と未来の区別があまり付きません。役者の格好も、黒基調ではなくもっと一目で違うと分かるぐらい変えて良いようにも思います。

もうひとつ。未来のシーンでは大人になっているので、高校生ではない大人の間でやってほしかった。多少は差を付けていましたし、「時間が経ってもあの時のノリは変わらない」という考えもあるのですが、それだとしてもやっぱり「大人の間」は重要じゃないかと感じました。少し検討してみてください。

全体的に

2回目の未来の寂しさをみると、高校生の見る未来としては随分寂しくも感じました。冷静といえば冷静なんですけどね。

残念な点は、物語に筋と起伏があればもっと良くなったのにということでした。筋がないので劇全体からぼんやりとした印象しか残りません。それも良いのですが、来年・再来年と考えるならば、全体に(軽い)ストーリーを組み込むということを考えみると良いのではと感じました。その点で非常に惜しい上演だったなと思います。

最優秀賞ですが……まあ誰も(当人たちも)予想していなかった出来事だったように感じました。評価点は、その秀逸なまでの演技(演技のリアルさ、テンションの使い方、間の使い方)に他ならないでしょう。

2008年度 群馬県大会