沼田女子高校「どうしておなかがへるのかな」

作:中村 勉(既成) ※台本はこちらで読めます
演出:(表記なし)

あらすじ・概要

姉妹が二人で織り成す家族劇。すねて家の外にいる姉を妹が呼びにいくところからお話は始まります。家族の構成や環境が変化していく中、姉妹の間にも微妙な気持ちの変化が起こります。

感想

キャストが妹と姉の2人だけで構成される舞台です。中村勉氏作ということで他作同様、比較的難しい台本なのですが、それが非常によく演じられていました。舞台上には左手に木製のベンチ、中央に木のオブジェ、右手に家と壁と扉。「家」と「その庭」ということなのですが若干公園ぽかったかなあ。もう少し工夫の余地はあるかもしれません。

最初声が弱々しく基礎的な発声の力は弱いようですが、途中からは役者が乗ってきて少し聞き取りやすくなりました。全体的に抑えた演技となり作品にとてもよくマッチしていました。ただ、そればかりだったのが勿体無かった。発生も演技も。別に元気に騒ぐシーンがあっても作品のムードを壊さず、それどころか元気なところもきちんと見えるとしんみりがより引き立つのです。例えば、中盤の二人がじゃれ合う(おいかける)シーンで手加減が見えたのがもったいなかった。全力で走れという意味ではなくて、わざと空振りしたりする必要はなかったのではないかということです。もっと元気に、力いっぱい追いかけっこをしてほしかった。台詞なら「制服いいよね。聖和」とか元気に言ってよかったと思います。

台詞や動作のメリハリのほかに、もう一つ気を使ってほしかったのは「間」。上演時間約50分というところからも分かると思うのですが、この作品の場合、もっと台詞をゆっくり話していいし、台詞と台詞の「間」はもっともっと気を使って欲しかった。さらに言えば、動きも大切にできたらよかったと思います。ほとんど動かず話をするってのはやっぱり勿体無い。

また2つ勿体なかったところがあります。1つはラストシーン。話が終わってから、一度暗転しエンドシーンとなっていましたが、暗転したせいで気持ちが途切れてしまいました。そこの暗転は絶対やめてほしい。ラストシーンは物語全体の余韻を残す一番重要なところなのですから、暗転しなくてもいくらでも見せようはあるはずです。ラストシーンの選曲も講評で指摘されていましたが、それを工夫してほしかった。もう1つは木のオブジェ。作品全体を貫く大切な大道具なのですから、木の部分をもう少しどうにかしてほしい(申しわけないけどしょぼい)。また青々とした木が本当にこの作品に合っているのかということももう一度考えてみてもいいと思います(考えた結果青々として木であったなら問題はありません)。

あとBGMがうるさくなく、主張しすぎず、また使いすぎることもなく良いムードを引き立てていたと思います。

全体的に

抑えたトーンでしんみりとしたムードをとてもよく意識して演じ手いたことに大変好感を持ちました。過去県内で観てきた中村勉氏の台本の舞台の中では一番の完成度といっても良いと思います。本当によくここまで台本を読み込みその意図を理解したと感激しました。県内の学校は、そういうこと(台本を読み込み・理解し・解釈し・自分たちのオリジナルとして構成し・演じること)がとても苦手な傾向がありますので、その点を高く評価したい。

あとは、台本自体そういうものだから仕方ない面もありますが、中盤にどしてもたるみがでてしまいます(客席をみていると寝てた人もいた)。変なアレンジをするというよりは、動作を含めた完成度を高め引き込むしかないかもしれません。メリハリ(強弱)を少し意識して出してみるだけでも印象は違うと思う。

個人的に関東行ってほしいなあと思ったのですが、今年はハイレベルな戦いで入賞もなりませんでした。たしかに演技技術等では他校に負けていますから仕方ないのかもしれませんが残念です。しかし、誰がなんと言おうといい演劇でしたよ。