高崎健康福祉大学高崎高校「マリオネット組曲」

作・演出:森田 涼子(生徒創作)

あらすじ・概要

本番を1週間後に控えた演劇部。舞台で練習をしている泉水は、次々とめまぐるしく舞台が入れ替わる設定に違和感を覚えながらそれを演じていき……。

感想

ホリのみの簡素な舞台。青いホリの雨のシーンから始まります。雨音が少し大きいな、きっかけがずれてるなと思ったら、その劇が演出家(役)によって止められて「雨音大きい」「きっかけおかしい」と指摘される。失敗したように見せてわざとという憎いかつ挑戦的な演出で舞台は始まります。舞台が止まりバラバラと出てくる部員たち。講評でも指摘はありましたが、何の係の人が舞台に出てきたの?という疑問はやはりありました。

音響の場所に、音響役を配置したり、客席から演出がかけて行ったりとか、サスと声を対応させる演出とか色々面白く工夫されて面白かった。そしてラスト怖かったです。入り込み過ぎちゃったらこうなりましたってある意味ホラーですよね。どうオチを付けるのかすごく気になっていたのですが、そうなりましたかと。講評の指摘にもあるとおり投げっぱなしではありますけど、これもありかなとは思います。

女装のキャラがすごくいい味出してたのですが、少し滑舌が悪かったかな。もうちょっと発声を練習してほしいです。しかし、それ以外はほぼ声の通りもよく、分かりやすく演じられていました。

全体的に

作・演出・出演(演出役)の、かなり挑戦的な(意図してかどうかはともかく)上演ということでこちらとしても気合が入ります。

結果どうかというと甘かったなと言わざる得ません。いや、すごく面白い台本なんですよ。生徒創作でこれだけよく書けているとすごいなと思うのですが、それはあくまで生徒創作という目でみたときで高校演劇での創作脚本全体としてはまだまだの部分があります。

主役の泉水がどんな役にも適応していくということを表現するための様々な設定の舞台(エチュード)だったと思うのですが、逆にいうとそれ以上の意味がない。この構成でこの舞台なら、このエチュードにもっと別の意味を持たせて、ラストシーンで何らかのつながり(意味付け)があったらもっと良かったんじゃないかと感じます。

もう1つ。この芝居は微に入り細に入り隙の無い演技・演出をして初めて成り立つと思うのです。全体的にはよくできている上演も、細かく見ていくとゆるい部分が目についた。具体的にというと難しいのですが、例えば前橋南ほどまでには劇空間(ムード)が作れていなかった。主役の泉水が翻弄されている様子も曖昧な部分があり、まだ自分が無いという部分についても演出やエピソードが不足していたと感じます。演じさせる以外の説明の仕方もあったのでは? またやや適応し過ぎで、どうしてあそこまでの狂気に至ったのかなという部分が透けてみかなかった。

面白いし、よく演じられていたんだけど、あと一歩という印象が残りました。