柏崎高校「あなたのおうちはどこですか」
脚本:内山 ユニ(創作)
潤色:柏崎高校 演劇部
演出:内山 由紀
あらすじと概要
地方の小島の、小さな洋服店。そこに、長男(?)が洋服の修行から何年かぶりに帰宅した。歓迎する温かい家族。そんなところへ迷い込んだ一人のいえで少年は、この島へ母親を探しに来たのだという。そんな少年すらも温かく受け入れる家庭。その家庭は、昔洪水のときに赤ん坊を家族として迎え入れたことがあるから普通のことなのだと。
またそんな折、親に恵まれい子供のための施設を運営する二人がその家庭に強盗(?)に訪れるが、やがて事情を話お金が必要だと一致する。そのとき島のお金持ちの後白河家が主催になって洋服コンテストがあり優勝すればお金が入るという情報が。親探しにきた少年の母親もそのお金持ちの家に関係あるようで、修行帰りの長男のコンテスト応募にみなが期待するわけだけども……。
主観的感想
終始ほんわかムードの本当に「田舎の温かさ」を前面に押し出した演劇です。そんな人たちと、少年の邂逅がある意味お話のメインです。
まず舞台なのですが、居間のセットが右手側にぽつんと置かれ、その周りにミシンやトルソーなどが見られます。お店または土間という設定みたいですが、居間の2面から出入りするためにその場所の位置関係というものが理解しにくい。どこが入り口なのかということはハッキリ3次元的に装置を使う方がよいと思いました。また空間がとびとびなので妙にだだ広く、温かい田舎というイメージとは反対に若干寂しい感じをうけたので、演出的に統一された方かよかったと思います。
話の内容からしてシリアスシーンがどうしても増えるのですが、進行役以外の人が棒立ちという状況が多々みられました。この高校も個性不足かな。また全体的に演技が弱く、気持ちから演じる(なりきる)ということをもう心がけて演じるとよいように感じました。結局のところ、探している母親は死んでしまっているのですが、それがわかったときの重さも出ていない。全体的にそんな感じです。
お話の作り(脚本)はというといまいち整理されてない印象で、温かい田舎のほのぼのしたムードをを書きたかったのはよくよく分かり演出面からも配慮されていたものの、ストーリー性、起承転結といった盛り上がりはないかなという感じでした。お話を作るには起承転結がやはりどうしても基本になってしまうと思いますので、まあ実際現状でも起承転結あるのですが「ストーリーの起伏」といった波を出せるとより良くなるかと感じました。とてもいいお話なんですが「いいお話」という印象以外に何も残らないのが難点のように感じました(印象に残りにくい)。でも、この劇はこれでよいと思います。
審査員の講評
【担当】西川- 「居場所探し」という、普通の高校生がよく作るテーマだったと思うが、登場人物をすべて善人で構成してしまったというのがぜんぜん違うところだと思う。
- 若杉さん(審査員から)「今日の芝居好感度No.1だよね」という意見があったが、たしかにそう思う。
- 台本からすれば無茶苦茶でなのに演劇として成り立っていたのは、演技が実に素直で、素朴さが役者の全身から出ていたのだろうと思う。
- この芝居のよいところは、村や田舎の温かさや豊かさを中心として、主役/脇役といった区別なくどの役者にもいいところを割っているとこだと思う。
- 少年の母親探しのとき、捜査本部の看板をその家の居間に置いたとき、少年が「普通じゃないよ」と言ったことに対し、村長が「ボクらには普通なんたよ」と言っていた。実にほっとする芝居で、そういう温かさを見せることで逆に現代の社会を見せているだろうなと感じた。
- 舞台が仕事場っぽくなかったり、事件が一気に解決したり、欠点はいっぱいあるけども、それらを許して逆に観ている側の心が洗われる芝居だったと思う。