伊勢崎工業高校「酔・待・草」
脚本:竹内 銃一郎(脚本家/演出家)
演出:多賀田 香苗
※最優秀賞(関東大会へ)
あらすじ
公園で見つかった死体(?)。第一発見者は、自転車に乗っていたカオル先生(体育着)。 翌日、二人の刑事ブッチとサンダンスは、 公園の木の前で横になって動かない(黄色いスカートを履いた)女性の周りに、 ロープを張った。しかし検死はやってこず、他の刑事も居ない。 二人はまず、再開を祝して一杯飲んだ。
そこへ現れる昨日の目撃者や発見者のカオル先生。 長い間会っていなかった妹が行方不明という男。 一体犯人は誰なのか、どこに居るのか? おそらくその妹だと言いながら、顔を確認しようとしない兄、 死んでいるかどうかも確認しない刑事。 本当に彼女は死んでいるのか? 他愛のない会話、決して誰一人真剣ではない犯人推測、 そんなやりとりが繰り返されていく中……。
【結末を完全に理解できなかったため、ネタバレ解説はありません】主観的感想
さすが、見事としか言いようがない。
劇としての完成度がまるで違う。 登場人物それぞれの個性がきちんと立っていて、 他校ではなかなか出来ていない 「話の進行役以外の人物がその個性に基づいての行動」がきちんとできている。 確かな演劇的リアルがありました。 話のスポットへの視線の向けかた、手振り、動き、その他もすごすぎる。 特にカオル先生という人物の演技が(声がいいのもあり)とても上手く、際立っていた。
問題点としては、台詞が若干聞き取りにくかったこと (刑事役が二人居るのですが、帽子被っていなかった方)でしょうか。 あと天井スポットを多用していたのですが、 立ち位置が光源より手前(客席側)だったために、表情が見えない。 公園という設定で、電話機が置かれているのですが、 舞台側を向いているため何だか分かりにくく、 折角、電話をかける演技をつけているのに、よく見えない。 手前やナナメに向けて、受話器を耳元に付けるときに客席の方を向く ということで済ませられなかったのか……と感じました。
若干オチが分かりにくく、元々60分用の台本でないのか終始早口でしたが、 しかし劇の完成度は段違いに高かった。 (去年の程笑いの印象は強くないけど)面白かった。
審査員の講評
【原】- 黄昏時なのだろうけど、半分以上の場面で前明かりがなくて、 (表情がよかっただけに)顔が見られなかったのが残念。
- 黄昏時の光量をずっと続けなくても(審査の時に話にたたのだけど)、 例えば、黄昏時ということをお客に了解してもらってから少しずつ光量を増やすという 方法もあるそうなので検討しみてはどうか。
- 刑事というとスーツでピシっとしたイメージに行きがちだが、 ダサダサの格好をしているところが良い味を出していた。
- ラストの崩れる(?)バリバリという音を、 ステレオで迫力を出して聴かせてほしかった。
- 役者の演技がすばらしかった。
- 台本を尊重して(削らなかったのだろうが)、 早口で少々聞き取れなかったシーンもあり、多少台詞を整理してもよいと感じた。
- 衣装なども決まっていて美しい。死んでいる人は(格好から)はじめ白雪姫なのかな、と感じた。
- カオリ先生の自転車の乗り方が、感じが出ててよかった。
- 刑事役の一人の滑舌に多少不安を覚えた。
- 最後のシーンで木が崩れていったのならば、 (緞帳をおろさず)きちんと最後まで観たかった。
- 20年ぐらいに(この台本を)読んで、そんなに面白いとは感じなかったけど、 今回舞台で観てみて「こんなに面白いものだったのか」と思った。
- 役者のキャラクター、個性が非常によく出ていて面白かった。
- 目線の方向や表情などがきっちり決まっていて、すごかった。
- 最初のカオル先生の台詞でなっていたBGMの音量が多少大きく感じたし、 2曲目に入った。かけるにしてもせめて1曲にしてほしい。
- 途中、音が(舞台ではなく)横から聞こえてきてしまい、もっと研究してほしいと感じた。
- 木の周りに花が咲いていたが、もっと多くてよいと感じた。
- ラストの夕焼けで顔(表情)が見えないのが残念だった。スポットなりしてほしい。
- 明かりの処理については課題が多く、例えは夕焼けでは上手と下手で差を付けるなどして 夕焼けの方向というものを作り出してほしい。
- テンポは良いが、やはり最初はゆっくり入り、最後もゆっくり落とす方が良いのではないか。 そのためには(台本の)若干のカットが必要になってくると思う。
- 汗芝居になっていて、久しぶりに小劇場を観た気がした。