宇都宮中央女子高校「あゆみ」

長方形のサスで区切った空半を次々と右から左(上手から下手)へと向かっていく人々(同じ格好)により、あゆみという主人公を中心とした、連続的な時間の流れのを表した舞台。言葉では非常に説明しにくいのですが、とても面白く完成度の高い試みでした。上演感想(感想板)をみた感じでは同じ形式での他校の先行上演(もしくは初代上演?)があるようです。

サスの外側は見えないという約束で、サスから消えた人たちは後ろ側を移動して右に再び待機するのですが、それが見えてしまうのが非常にもったいない。左から出ると同時に、右から入る別の人が同じ人の続きを上演するという高度なことをやっているのですから、内幕ないしは黒いパネルを用意してサスの両側を見えなくするだけで、面白さが倍増したと思うのです。実際、途中手で左右を隠してみてましたが、準備の様子が見えないだけで次どうなるんだろうというワクワク感がありました。もったいないです。

それともう一つ、映像(舞台)の文法としては進行するもの(物語進行)は通常「左(下手)から右(上手)に向かう」ので終始気になって仕方ありませんでした参考)。知ってて敢えて上下(かみしも)にしたのか、知らなくて上下にしたのか、映像と演劇は無関係だということなのかわかりませんが、気持ち悪さがありました。

さくら清修高校「自転車道行曾根崎心中」

教室に自転車で集合ということで度肝を抜かれました。この発想力は素直に称賛したいです。動かない銅像のクラスメイトは原発のメタファーで学校は市町村のメタファーなんだと思いました。講評で指摘されていましたが、これがわかると全部がすごく皮肉です。しかし、上演後の観客席の様子だと「よく分からなかった」人が多かったみたいで勿体無いかな。

主題となっていた古文(詩?歌?)もおそらく内容の何かとリンクしているのだと思うのですが、現代語でもないことも相まって内容がよく伝わってきませんでしたが、どこか底知れぬ怖さはありました。

作新学院高校「TSUBASA」

脚本:大垣 ヤスシ(顧問創作)
演出:仁科 朋晃

※優秀賞

あらすじと概要

理科準備室の準備室「開かずの部屋」。そこに忍び入った女子3名は、はしゃいでるうちにそのまま中に閉じこめられてしまった。助けを呼ぶためコータローに携帯から電話をする。コータローはサトコの幼なじみで、マナミの好きな人。マナミはスケッチブックにコータローの絵を描いていた。助けに来たコータローに大してカメ(亀田)が気を遣ってくっつけようとするのだけど……。

主観的感想

まず真っ暗な狭い空間。「開いた」という声と共にドアが開きあかりが差し込む。「真っ暗で何も見えないよ」という言葉に応じて部屋の電気を付ける。パッと明るくなる狭い準備室の雑然とした空間。こんな始まりの演劇で、説明台詞の応酬が気になって仕方ありませんでした。ラストシーン近くでも「夕陽きれいー」とかも、台詞で直接説明せずに、比喩的に表現して事実を感じさせるとか、台詞のリアリティをちょっと研究してほしいなと気になって仕方ありません。

さて、演劇の方。「作新で初めての女子高生等身大もの」(パンフより)ということで、3名の主役、サト子という普通キャラ、マナミという恥ずかしがり屋内向キャラ、カメというバカキャラ。実に基本を抑えた人物配置で、それを役者がうまく回して笑いに繋げていました。ノリの良さはよく出ていて、見ていて楽しい演劇でした。

装置の方、何年も使われていない開かずの間という割には、安易ではありますが蜘蛛の巣みたいな演出(別に演技だけでみせてもいいと思いますが)や、ホコリをつもらせるぐらいの装置の演出はできたと思うんですがそれはありませんでした(舞台を汚すとマズいのなら下に敷くとか)。

再び演技ですが細かいツメが甘い印象。電話するときの動作が相手の番号を探している様子がなかったり、冒頭で標本に驚くシーンがあるんですが、その驚きが「予期した驚き」になっていました。本当に驚いてください。感情表現のシーンについてもコータローはそこそこ出来ていたのですが、3名の主役はちょっとなーと感じました。ノリのよい演技、3人のワイワイ騒ぐというリアリティは実によく出ていただけに、反面感情表現の弱さが気になりました。もっと研究が必要でしょう(参考:演劇資料室)。

全体的に。登場人物の配置の配置が基本を抑えてると書きましたが、それは裏を返せばステレオタイプということです。つまり、人物像としての深みがあまり感じられず、そんな仲良し女子3人が開かずの間に迷い込んで幼なじみだったり好きな人だっりする人が助けに来たけど色々あって帰っちゃって最後は先生に見つかって出て行きましたというお話。そういう甘酸っぱいほどではないにしろ何気ない日常のひとコマを切り取って描いている劇。

面白い(笑う)という意味では言うことはありませんが、途中に差し込んだシリアスシーンを初め、いまいちテーマというか描きたい対象を絞り切れてない散漫とした「何気なすぎるひとコマ」という印象を拭えませんでした。いや面白かったしよく出来てたんですけどね、だから余計に…。

審査員の講評

【担当】若杉
  • 大変完成度が高く、総合芸術として全体のレベル高い仕上がりだったと思う。
  • 夢ひとつにも、茶化す人がいて、追いかける人がいて、笑いありドラマありで上手かった。
  • お芝居の作り、特に笑いのセンスなんか見事だった。
  • 気になった点として、日常の会話や告白の言葉とか感情表現、その辺を研究してほしい。叫ぶばかりが台詞じゃないし、呟いたりささやいたり沢山色々な話し方がある。感情と言葉が違ったり、言葉にも色があったりとか。そういう所を研究すればもう一段上にいけるのではないかと思った。
  • それでも、きちんとまとまった完成度の高い作品だと思います。

宇都宮女子高校「振り上げすね打ちもう一本!」

脚本:志津 利美香(創作)
演出:杉山 朝実、田崎 愛

あらすじと概要

亡き父をはじめだいだいと継がれている長刀(なぎなた)道場は、門下生が減り存続の危機だった。そして一人また門下生がやめて、今や娘とその友達だけ。その道場を支える母親はまた、手放そうかどうかと悩んでいる。そんなところへ、昔母親の親友だった今は「小野あゆみ」の娘「翔子」がやってきて、お金に困っているという。道場を売って翔子にお金を貸そうとする母だったが……。

主観的感想

女子校ということで女子ばかり、でも大変よく演じられていたと思います。全体的な真面目なお話作りなのですが、お婆さんが一人ギャクキャラでおいしいところをみんな持っていってました。途中出てくる男子役(マサル役)も男かと思うぐらいで、なえなかでした。ただ全体的にシリアスが多めで、しかもそのシーンの演技が弱かったなあという印象です。まして死んだ人の存在をきちんと(主題として)扱っているのですから、相応の重みを出さねばならなかったでしょう。

見ていて誰が誰だか分かりにくかったのが一番問題だなと思いました。大野家(道場の一家)と中野家、小野家と3家族の娘たちやら母親やらが人物相関として絡み合うのですが、個性付けが(個性を敢えてつけない無味乾燥な人物として扱うことも含め)うまくされておらず、誰が誰で全体の相関の中でどういう位置なのか見ていてよくわかりませんでした。また、それと関連してシリアスシーンで、進行外の人物が棒立ちしてました。これも結局、個性付けがされてないことが原因だと思います(個性があったならそれなりの動きができたはずです)。

細かいところでは、場面転換がやや多いかなということと、看板を下ろすという見せ場シーンでなぜ看板ライトが消えたままだったのかということと、ラストシーンの看板がナナメに置かれなかったため見づらかったことと、スポットを使えばいいところでなぜ使わなかったのかということと……。そういう荒さは感じました。また、中野一家の黒幕的な動きについてはフリだけして回収もしないというのも、話構成として気になりました。台本はツギハギだらけで収集付かなくなっている印象で、演技の方も良く演じているものの安心もできずとそんな印象を受けた劇でした。

一つ、道場を売ろうと決めた師範=母親と対立する娘たちという構図を振り上げた長刀(長刀を構えて母親を見据える)という形で比喩的に表現したのは、とても良い演出だと思いました。

審査員の講評

【担当】篠崎
  • 正面の看板、板の古さがあった方が感じが出たと思う。
  • おばあさんが床の間のような場所(神間?)にいたが、道場にそういうものははたしてあるのか?
  • 楽しかった、役者が上手くて引っ張っていったと思う。
  • 脚本には無理があったと思う。娘の留学が今回の上演では嘘ということになっていたが(編注:以前はそうではなかったそうです)、その変更でまた無理が出ていたと思う。お金をたかにきた娘がいきなり道場に泊まっていくというのもリアリティがない。
  • 小野あゆみの二人の娘が父違いの姉妹ということだったが、それがうまく描かれておらず、その娘の母である小野あゆみ(編注:死んでいる)の重みが出ていない。よってただ単に友情だけでお金を与えるという行為に無理が生じている。
  • (編注:初めは拒否的なだったのに)無言電話の話をちょっと聞いただけではたして心変わりするだろうか?
  • 等々あるが、それでも観られたものになったのは演技がうまかったからだと思う。特におばあちゃんはいいキャラだった。

栃木高校「塩原町長選挙」

脚本:山形南高校映画演劇部
演出:演劇部
※最優秀賞

あらすじと概要

調味料に「塩」しか使わない塩の町、塩原町の町長がなくなった。町長の長男と次男がそれぞれソースとしょうゆに分かれ、町を挙げての町長選挙となるのだけど。

主観的感想

幕開き、装置は何もなし。テーブルが置かれスポットの前で権田原おじいさん(父?)と子供がナレーションし舞台に入るという演劇。どんな感じになるのかとドキドキしたものですが、なんのなんの大変にバカバカしい(褒め言葉)しょうゆとソースの戦いを繰り広げた上で、最後にホロりとさせる熱い演出をしてくれました。お見事です。元全国大会台本ということで、何と言っても本の良さが光ってますね。

田舎でありながら都会に憧れる若者達という、ひと時代昔風なコメディの作りなのですが、そのバカバカしさをきちんと「やりきった」ことが大きかったと思います。やはり、間の使い方とメリハリが非常にうまい(もちろん演技がよい)。絶妙のタイミングでかけあいを回していく様子は見事という他ありません。

途中若干アラがなくもなかったのですが(台詞に詰まったりとか)、おそらく何十回と練習と演出を繰り返しただろうラストシーンの出来は秀逸でした。反面、舞台美術(照明・音響・装置)や総合芸術的視点では今一歩というところでしょう。

細かい点

  • まず最初のシーン、権田原じいさん(お父さん)の子供(次男)がナレーションするシーンの裏で、すでに兄とおじいさんが食事をしているのが気になってしまいました。サスの外(照明の外)は存在しない世界なので照明があたってから動いてほしいです。
  • しょうゆ派、ソース派に分かれていくところで、無理矢理連れて行かれるシーンがあるんですが、連れて行かれる人はもっと未練が出るとよかったかな。
  • 紅白に分けてしょうゆ派、ソース派を分かりやすく表したのは良かった。
  • しょうゆ派、ソース派の旗(のぼり)は両面に字が書いてある方がよかったかな。
  • 部屋とか教室とかのシーンでは、照明の範囲をしぼって狭く見せた方がよかったのでは。
  • 月夜で、元町長の息子二人が「つかれた」「いよいよ明日投票かあ……」というシーンでは、もう少し実感がこもるとよかったかな(他と比べておざなりな感じがした)。
  • ホワイトボードを使い開票するシーンでは、極太ホワイトボードペンを使って見やすくしてほしかった。
  • ラストの権田原じいさんが怒るシーンでは、物を蹴飛ばして人を勢いよくはねのけるぐらいの迫力を出してもよかったかも知れないなと感じました(やりすぎると問題あるかも知れないので実際どうかは要検討ですが)。

審査員の講評

【担当】森脇 清治 さん
  • 美術が全くない舞台でどうなるだろうと思ったが、見事に広い空間を埋め尽くした。
  • 月明かりのシーンはちょっと暗かったと思う。
  • 全体的に面白い面白い芝居だった。
  • 教室のシーンで短い暗転があったけど、トチったように見えるので無くてよかったと思う。
  • アナウンサーはもっと派手でよかったんじゃないかな。
  • お父さんの声がよく出ていてよかった。