2019年度 群馬県大会
- 場所:大胡シャンテ
- 日時:2018年11月16日(土)、17日(日)
- 審査員
- ヨシダ朝(日本工学院専門学校 声優・俳優科 講師)
- 大竹 直(劇団青年団俳優)
- 小堀 重彦(群馬県立西邑楽高等学校演劇部顧問)
- 最優秀賞
- 【関東】新島学園高校「平成たばこ屋奇譚」
- 優秀賞
- 創作脚本賞
今年はどれも素晴らしい上演でした。中でも、次の学校は個人的にお気に入りです。
最後の「眠れる森の美女」は着想の勝利で、創作脚本賞でも良いんじゃないかと……ダメですか、そうですか。毎年のことですが、どうにも審査員の先生方とは趣味が合いません(苦笑)
なるべく丁寧に感想を書くように心がけましたが、丁寧に書けば書くほど感想書く時間を取られてしまうので、荒い感想がありましたらごめんなさい。後で気づいたら修正しておきます。
昨年は、県内で関東大会があったのですが、都合で行くことができませんでした。以前より都合を付けるのが難しくなっているので、どこまでこの活動を続けられるのか分かりませんが、期待されている限りは(されてるのかは知らない)続けたいです。
話は変わりますが、群馬県はアマチュア劇団が盛んです。元高校演劇部員など結成され、大勢の観客を集めている公演もあります。たまに観に行くことがあるのですが、完成度高くて圧倒されますね。高校生や学生ほど時間が取れない中で、年1回とはいえ結構な完成度の劇を上演しているところみると「すごいな」と純粋思います。
でもそんな人気の上演も、よくよく見るとあちこち荒があります。世間で「高校演劇」と言うと所詮は高校演劇と見られがちですが、高校演劇もぜんぜん負けてないし、むしろ勝ってる部分すらあるんです。色々演劇をみてみても、結構「これはすごい」っていうのは少ないのです。
何が言いたいかと言うと「県大会すごいよ」「県大会に出てるみんなすごいよ」ということです。
そんなすごい素敵な上演を、これからも期待しています。
ある丘の上に集まる4人の生徒。川村エリカからいじめられている山越ミイナ。そんな彼女を守る会が結成される。
2014年の全国大会で松山東高校が上演した本のようです。作者::越智優氏が書き下ろしたらしい。
ホリとベンチ2つと、ゴミ箱が置かれた簡素な舞台。公園かな?と思ったら小高い丘のようです。ゴミ箱にはきれいに洗われたペットボトルしか入ってなくて、それだったらまだ空のほうが良いような……。
いじめられているのに特に反撃しようとしないミイナと、理由は分からなず頑なにミイナを守ろうとするサオリ。そして見つける捨て犬。この台本すごいですね。とてもよい台本を選択したと思います。
結構頑張っていたのだけども、全体的に反応が甘かったかな。例えばABの間を割って入られたシーンでABが「何アレ」って捨て台詞と共に去っていくのですが、割って入って通り過ぎてしばらくその様子を眺めてから「何アレ」ですよね。割って入られるなりいきなり「何アレ」はおかしいですよね。
そういうアクションに対して、気持ちが動いて反応するというリアクション。相手の台詞が何か発せられて、その言葉で自分の気持ちが動くことでの反応。相手の台詞を言い終えたら、次の台詞を言うのでは伝わるものも伝わりません。「えっ」「うん」「あ」が多く、きっと台本に書かれているんだと思いますが、それはその言葉を発しろという意味ではないのです。そういう反応をしてくださいね、という意味です。
講評でも指摘されていましたが、ダンボールの中に居るはずの犬が「本当は居ないのに居るように演技してるんだな」と見えてしまいました。これ本来は「見えないけどダンボールの中には子犬居るんだ」と観客に思わせないといけません。中の犬はじっとしているわけではないですよね。いろんな姿勢や表情をしていると思うのです。それをちゃんと決めて、想像し、みんなで意思を統一して演じていましたか? 子犬をみて一喜一憂するだけで、そこに存在するように見えるのですよ。子犬はかなり大切なポイントなので、もっともっと大事にしてほしかったと感じました。
ラストシーンの「子犬が一匹居るだけで私良かったのに」は強烈でした。良い台本を選び、丁寧に演じていたと思います。楽しかった。
ある田舎の町長が収賄と脱税が逮捕された。氷上アリーナ誘致計画が頓挫しそうになる。そんな中、次の町長を狙う副町長と、そこにある学校の新聞部の織りなす物語。
舞台中央から下手側に町長室、上手側に新聞部を配置して照明で区切って進行します。
町長室に長寿会の老人3人が居るのですか、ちゃんと老人してます。動き方も、腰がとても悪い人と、少し足腰弱ってる人と、足腰が元気な人みたいに演じ分けられています。他校がよくやってしまいがちな、老人たちの反応速度が早すぎるという失敗や、新島が過去の上演でよくやっていた「老人たちがみんな同じ老化度」というミスはありません。副町長や秘書もそれっぽく見えますね。ややステレオタイプなところもありますが、さすがですね。副町長はステレオタイプのほうがのうさん臭さは出ますし。
新聞部の面々も楽しそうで良いです。ただ、途中将来の話をすると部室トーク(35分目くらい)が、立て板に水すぎて反応になってなかったのは残念でした。やや台詞が多いのかな。部室トークは全体的に、もう少し反応をきちんと作って演じてほしいところです。
ラストのほうは超展開(プロジェクター投影の文字)で、新聞部顧問だった先生が総理大臣になるのですけど、そこにインタビューに行く元部員とか、なかなかにみせてくれました。でもこのラストシーンならば、神谷先生とその部員の、逮捕された元町長に対する想いをもっと描いてくれた方が良いかな。2人は元町長や元町長のやったことをどう思っていたのか。
政治ネタを扱った舞台は、過度に説教臭くなったり、言いたいことが多すぎて崩壊したり、リアリティがありすぎて実感がなかったり、台詞が上辺だけ滑ったりという失敗が大変に多いのですが、さすがの大島先生というべきかその辺のラインはきちんと弁えていて、政治ネタを扱いつつきちんと成立している珍しい上演でした。
女はエレベーターでしか出入りできない部屋にいました。やがてエレベーターの鍵を奪われました。そして足の自由を奪われました。次に耳を奪われました。そして目を奪われました。最後に……
舞台中央に広めの台が置かれ、奥に黒と白の高めのオブジェ。どうやらここが部屋のようです。部屋が途中で途切れ観客席側に突き出しているという設定だとわかります。かなり気合の入った装置で、これだけでも期待度アップです。
まずびっくりするのが主演の「女」の圧倒的な演技力。ほとんど女のひとり語りなのですが、とてもよく聞き取れる声であり、色々な感情が入り乱れた台詞。一つの台詞の中でも「夫が好きだ」という気持ちと、「外に出られないストレス」と、「言いくるめられてしまった釈然としない」気持ち。そんな複数の感情が目まぐるしく現れては消える台詞。恐ろしくうまく演じられています。
また姿勢と動作がとても美しく、言葉を発しなくても動作だけで表現してしまう。「他の学校に足りないのはこれだよ」と叫びたくなる気持ちでいっぱい。ただ欲を言えば、もっと多くのことを動作で表現することはできたんじゃないかな。
足が動かなくてった女に、夫は車椅子をプレゼントするのですが、車椅子が最初から置かれているので違和感がありました。プレゼントするシーンに出してほしかったかな。
終盤、街の喧騒として救急車の音がするのですが、日本の救急車のサイレンなので一気に萎えました。この舞台の設定は日本なのですか? 違いますよね。
すべてを奪われそうになって、それでも声だけは奪われたくない。「声を奪うなら命を奪え」と言う。すごいラストでした。
とても良かったし、納得の優秀賞(関東)なのですけど、より良い上演を目指すは難しいですね。
「声だけは奪わせない」と言われて「ほかは良いけど声はダメなんだ」で終わりかねないところなのかな。どうして声はダメなのかもっともっと客席に使わってくると良かったと思います。声以外の色々は、すんなり受け入れてる感がしてしまうのです。
それと強く叫ぶように発声して演じるシーンがやや多かったかな。最後の声のシーンを際立たせたいなら、ほかのシーンでもっと叫ばせないようにしたほうが良いのかも知れません。物理的に叫ばなくても、叫ぶことはできます。微妙な演出のさじ加減なのでやり方は色々あると思いますが、少なくとも演出を立て、きちんと方針を整理したほうが良いでしょう。
よほど練習したんだろうなと思わせる圧倒的な上演した。すごかった。