高崎女子高校「ドロボウの街」

脚本:岡田 美恵子(生徒創作)
演出:岡田 美恵子

※優秀賞(次点校)/創作脚本賞

劇の概要

「私は世界一のドロボウです」で始まる物語。 なんとそのドロボウは人生を奪うドロボウだった。ドロボウに人生を奪われ自分が 何者かも分からなくなった主人公は? 一体何者?

前半はギャグをふんだんに遣い、個性的な登場人物による掛け合いを組み合わせながら、 人数が増やし、だんだんとドロボウの街へと近づいていく。 ドロボウでオークションにかけられる主人公の人生。 実は強盗だった。そんな人生本当に取り返したいのか?  そんな中、一緒にドロボウの街までやってきた警官が 「実は人生を買った人間」であることが分かり……。

主観的感想

劇の主題とも言うべきドロボウの街が出てくるまでが長い。 ドロボウの街、人生のドロボウと言われたら、 観る側としては奪われた人生、を中心に期待してしまう。 そして、人生を買った人間を出すのならば、 なぜ「人生をとられた人」と「人生を奪われた人間」の 対比を物語の主軸に添えなかったのか?

ラスト10分。人生について色々な登場人物の台詞がありますが、 そられの言葉に全く重みがない、軽い。 演技の問題よりも、唐突だというのが一番の原因みたいです。 本来そういうことこそ丁寧に綴るべきであって、 時間不足なのだとしたら、前半の時間をもっと圧縮するべきだと感じました。 タイトルにもなっているのに、ドロボウの街に居る時間が短い。 意図はしていないのでしょうが、 引っ張った分だけ期待が大きくなり「なんだ……」という印象を抱いてしまいました。

以上、話の本筋を慎重に追う限り、創作脚本賞には少々疑問が残ります。 とはいえ、各部はバランスよく書けていて、 演技、演出等、常連だけあり非常に高い完成度で終始楽しめます。 BGMの使い方(フェード等)もうまかった印象あります。

審査員の講評(の主観的抜粋)

  • 背景美術のついたての後ろが見えたのが残念。 細かい点だが、劇の中の虚構を崩しかねない重要な点。
  • ラストシーンにおいて、主人公が決断するシーンで「口パク」に なって台詞を言ってくれない、結末をお客任せにしていることが気になった。
  • 人生を奪われた主人公と、人生を買った警官の二人の関係(図式)を もっと描いても良かったのではないか。

沼田高校「二人いる!?」

脚本:磯田 武久(生徒創作)
演出:磯田 武久

主観的感想

高校の美術室を舞台にして「ミステリーに挑戦」がパンフレットのうたい文句。 コンセプトは良いにしても全体的に不足だらけ。 観ただけでは何を目指したのかすら少々分からなかった。 男子3名によって繰り広げられる主人公との関わり合いが主軸なのですが、 そのどれもが中途半端。お約束の独白あり。 劇中、暗転が非常に多く、 おまけに多くの暗転が「時間跳躍」をしているために最後にならないと意味が分からない。 ミステリーには必要ですか、多少演劇には合わない見せ方のような気もしました。 あまりお客さんを引き込めていない様子で、 物語の導入に「つかみ」がないせいかなと感じました。

審査員の講評(の主観的抜粋)

  • 物語の流れに沿っていない一発ギャグが多かった。 その種のギャグは慎重に使わないと、物語の流れを止めてしまう。 芝居に組み込まれた物なのか、芝居の上に取ってつけたものなのか、もう一度慎重に考えて。
  • ラストシーン近くで父の声がスピーカーから聞こえる場面があるが、 二人の人物両方に聞こえてしまったために、物語が現実を超えてしまった。 一人ならば心の声になるが、二人に聞こえると超常現象になってしまう。
  • 説明的な台詞や独白が多く、これは(60分という)時間枠を超えないためだと 思うが、例えば「虐待をうけてたんだ」などの言葉を軽々しく述べたりはしない。 自分がどういうシチュエーションならそんな話を友人とかにするか考えてみてほしい。 そういう言葉の持つ重みを慎重かつ丁寧に描いていくのが、本来の演劇の姿。

桐生南高校「アリスは筋書きの中で踊る」

脚本:青山 一也(顧問創作)
演出:藍原 宏心

劇の概要

ある少女が学校へ。 気がつくと、そこはなぜか不思議の国で、 その少女はみんなから「アリス」と呼ばれる。 アリスと呼ばれる少女は、驚き職員室へ向かうのだが……。

主観的感想

身も蓋もなく言ってしまえば、 導入とラストの方で掛かるテープ(スピーカーの音)にあるように 「周りの大人から、こうあるようにと求められ、そう演じ続ける少女」の物語。 不思議の国という舞台を用意する事で、直接的な明言を避けながら構成されています。 ただ、その不思議の国という舞台の中にテーマ性が埋没した感じがあって、 もっと現実的な問題に関する事件を劇中で起こしても良かったのかな、と少し感じました。 実際にアリスと呼ばれる少女が筋書きの中で動かされつつ、そこに抵抗を覚える。 在り来りですが、こういう構成の方か話が見えやすい。 とはいえ、創作脚本としては全体の中でもかなりよく出来ていると感じました。

演技・演出面では、全体的に無難すぎる印象がありました。 もっと突出した点をみせても良かったのではないでしょうか。 本に対する(演じ手の)理解が甘い感じもしました。 ラストシーンは印象に残すよう演出されていましたが、 やはり全体的にあと一歩踏み込んで欲しかった。

審査員の講評(の主観的抜粋)

  • 背面にある大きな衝立。扉の開け閉めは良かったのだけど、 閉まるときにバタンという音がしてしまうのはもったいなかった。 スポンジ等を使ってなんとかしてほかった。
  • よくまとめられ丁寧に作られているが、もう一つ何か「欲」のようなものがあれば。