渋川女子高校「on the edge」
原案:渋川女子高校演劇部
脚本:平石 祥子(生徒創作)
演出:生方 依子
劇の概要
夜、廃病院の屋上。そこへやってきた少女達は、少女ユキに呼び止められる。 ユキは、落ち着きのある性格ながら言う内容や、やることは無茶苦茶。 そんな少女に、見つかってしまった3人の自殺志望の少女達。 ユキは遺書を紙飛行機にしてみたり、感動するように書き直させてみたりとやりたい放題。 しばらくして「あんたたち、本気で自殺するつもりじゃない」と言って、 3人をフェンスの外側、屋上の際に立たせて「飛び降りたとのシミュレーション」を始める……。
主観的感想
「この作品は、設定、構成、台詞など、すべて1から役者の即興をもとに部員全員で創り上げたものです」 と(パンフの)説明にはありますが、 即興劇が下地であることを感じさせない話造りとユーモアは観ているものを引き込んだ……と思います。 というのも、かなり好みのお話で観ながらのめり込みましたので、 (元々客観的なものではありませんが)以下 ひいき目に書かれていることを予め了解ください。
とにかく登場人物が強烈で、また役柄がとても合っています。 ユキを中心とした登場人物達の個性と、それらが織りなす間がとても良かった。 通常、自殺などをテーマとして扱うと重くなりがちで、話は沈み気味。 テンポは低下し、無駄な独白が増え、全体的にクサくなりますが、 そういうことは一切なく、それでいてきちんと伝えたいことを伝えている点は見事。
気になった点ですが、屋上にやってきた少女達のうち2名の個性が弱かった印象が否めません。 印象の強い2人(残り1人とユキ)を「動」とすれば、この2人は「静」にあたるので仕方のない面もありますが、 「静」は「静」なりに人物の魅力は出せるはずです。 ただ静かおとなしい性格というのではなく、 おとなしいならおとなしいなりの個性をきちんと出して欲しかったと感じました。 また、2回ほど登場する「二人組の大学生」。 UFOを呼ぶために屋上に来ちゃうようなギャグキャラなのですが、 この二人の使い方をもっと慎重にして欲しかった。 話の流れから乖離している二人であるため、出てくるとメイン4人が築いた間とムードをぶちこわしてしまう。 途中、照明をまるでストロボ写真のように使い「パッ」「パッ」と 1コマの情景を切り取って数秒映し出す(人物は静止している)のはとても良かった。
中盤の屋上の際に立つシーンまではすばらしかったのに、 その後の展開が惰性任せでもったいなかった。 もしちゃんとラストまでまとめ上げられたならば……と感じました。 それでもラストシーンは印象的で綺麗でした。
審査員の講評(の主観的抜粋)
- 廃病院の屋上、フェンスとビルの端。 これらの位置関係が掴みにくく、時にはフェンスを越えて人物が移動しているシーンがあった。 ビルの端は(タイトルにもあるぐらい)この作品において最も重要な点であるから、 この線を越えたら……の「この線」がハッキリと観客に分かるようにしてほしかった。
- 途中、お客さんを参加させているシーンがあったが、 参加させたらちゃんと最後までフォローして欲しい。 手を挙げさせられたまま、ほっとかれ先に進まれてしまうと、どうしていいかわからず困った。
- シーンやギャグなどをもっと取捨選択・整理して、洗練してもよかったのではないか。