草加東高校「DELETE」

脚本:コイケユタカ(顧問創作)
演出:草加東高校 演劇部

あらすじと概要

近未来都市。ある地下共同体で冷凍保存から目覚めたタケルが迎えられた。政府組織がタケルを探してやってくるがシラを切る人たち。そしてそこはレジスタンスたちのアジトだった。タケルは、すべての戦争プログラムを削除するウイルスの、そのキーワードをタケルだけが知っているはずだった。そしてやがて完全包囲され迫る政府軍と「Enter the Password」の文字。はたしてタケルはパスワードを思い出せるのか?

主観的感想

あらすじからもわかるとおり、実にゲーム的なストーリーでその上にゲーム的な演出を行った演劇です。過去、地元の高校演劇でこの手の作品は色々見てきましたが、劇として成り立っているものははじめてみたなーという印象でした。実に忠実にゲーム的ストーリーを構成し、最後は恋愛ネタで落とすあたりもそのままだなあーという印象。シリアスに偏りすぎず、動きや見せ方に遊びを持たせ(特にロボットなのかな? 7人ぐらい)うまく作り込んでいる印象でした。

ただまあ逆説的にいえば、いかに作り込んでこようともその「ゲーム的である」という最大の弱点を克服するには至らなかったかなとも感じました。まず演出面。服装にもうちょっと近未来的な演出(でもあからさまじゃない程度)があってよかったように思います。BGMの使い方、ノイズ混じりや戦闘シーンでゲームのバトルテーマを流すなど安易な選択は演劇としては違和感あり。お話作りも「ゲーム的だね」以上でもなく、やっぱり安易と言わざる得ません。

実はこの作品の一番興味深いところは、昨今若い人たちの間で流行っている「設定ゼロ状態における物語構成」をまさにそのまま使ってきたところですが、長くなるので全体感想の方にまとめておきます。繰り返しになりますが、良くも悪くもゲーム的であるということが、この演劇を一番表した言葉であると思いました。

全体としては、笑いもきちんと取って、盛り上がりもつけて、最後はちょっと良い話という感じで、細かいことを気にしなければ十分楽しめるものだったと思います。劇自体は実にエネルギーの溢れる意気込みを感じさせた作りになっていて、演技もきちんと考えられて作っていましたし、よく頑張っていたと思います。

審査員の講評

【担当】篠崎
  • ギャグを次々と出して、しかも新幹線のような速度で非常に面白かった。
  • 剣撃ち合い(チャンバラ)ももっとスピード感があったらよかったかなと思います。
  • 全体的に話の筋に関するところがおざなりで、他の関係ない部分がよく出来ているという印象。例えば世界設定が不明確で、世界戦争後にどうなったのかとか、今の地上の様子はとか、何のためのレジスタンスなのかということが分からなかった(編注:設定ゼロについて)。
  • 音の使い方ですが、ラストのパスワードシーンではどんどんボリュームを上げていく演出があってもよかったと思う。
  • ハルカ(お婆)が実はタケルの恋人だったという設定はよかったと思う。
  • あと細かいことですが「大帝国戦争」とか「氏神」といった単語を使っていたけども、意味分かって使ってるか疑問を感じた。
  • あれだけ体張って演じていると、芝居をやってる感じがしてよかった。