長野西高校「めぐるめぐる梶の葉たち」

原案:宮端 優子
脚本:演劇部(生徒創作)
演出:大谷 万悠

あらすじと概要

戦時中の高校で女子3人の青春を描く。

主観的感想

学校の昔の文集(でみつけたいい話)を元とした、戦時中の劇です。舞台写真は高校のページ参照

パンフレット等によると昭和20年の設定とのことですが、それにしては元気で陽気すぎたように思います。お話としては、戦争へ将校への千人針と学校が軍人たちに使われてしまうことに対する「綺麗に使ってください」という女子たちの必死の嘆願という2本柱になっています。

舞台装置ですが、斜めに置かれた6面体の手前2面と上1面をハズした形の空間を教室と見立ています(上記写真参照)。舞台では、役者たちが袖ではなく装置の裏に引っ込みます。この意味が全く分かりませんでした。装置の近くまで内幕を引いてしまい、袖に引っ込めばよかったと思います。そのせいで袖から装置裏手まで移動する人物が見えるなど無理が生じていました。

戦時中という設定にしては、床が綺麗すぎ、ほうきも上履きも、まして制服も何もかも綺麗すぎました。役者の切迫感、装置、ストーリーの中の「弁当」の中身、どれ1つとっても戦中ということを台詞の文章以外で説明できなかった、演出できなかったことが最大の問題でしょう。そのため、戦時下のしかも終戦間際の切迫したムードというものがどこからも感じ取れず、この演劇をリアルに見せることに失敗しました。もっと必死に戦中のことを調べないとダメです。また、ラストシーンで現代の演劇部部室へ戻り、この物語の成り立ちに関する話を述べるのですが、この部分ははっきり言って蛇足という印象を受けました。

あくまで印象ですが、いっそ、現代の「私たち」が戦中にワープしてその視点を通して戦中を描くぐらいの方が話として伝わりやすかったのではないでしょうか。いいエピソードの文集をみつけて、それを翻訳し必死に伝えようとした気持ちはとてもよく分かりますし、その努力も大変だったと思うのですが、では実際それがどの程度伝わったのかというと「ああいいお話を見つけたんだね」以上の感想を持つには難しいかと思います。

細かい点

  • この高校も演技のテンポが一定で、メリハリがなく、間もイマイチな印象を受けました。資料室を参考にしてください。
  • 登場人物も顔をメイクしていたように感じます。メイクで血色悪く見せるなら分かるんですが綺麗にしていたのでは、メイクするほど余裕があったの? 戦中なのにそんなに血色がよいの? と感じました。

審査員の講評

【担当】勝島 譲吉 さん
  • 学校史をドラマを作るというのはよくあるのだけど、自分たちのドラマにしようという熱気は伝わってきた。
  • 現代の部分をふくらますことでもっと良くなったのではないか。
  • 声がよく出ていて、姿勢も良かった。
  • 話の筋として、校舎の存続と千人針があったんだけど、最終的には「校舎の存続」に傾いて、千人針の方がおざなりになってしまった。
  • 校舎を綺麗に使ってくださいとお願いにいくとき、千人針を握りしめていてもよかったのでは。
  • セットに窓があるんだけど、夕陽が映り混んでいるとき先生が歩いてきて、窓の向こうが廊下なのか外なのか分からなくなった。
  • 建物のセットが周りの明るさで浮いてしまった感じがする。建物だけを中心とした照明でも良かったのでは。